胆石治療の合併症とリスクとは?手術後の生活への影響【医師解説】

治療には期待される効果がある一方で、どのような方法にも一定のリスクや合併症が存在します。腹腔鏡下胆のう摘出術は比較的リスクの低い手術とされていますが、胆管損傷や出血といった合併症の可能性や、術後の生活への影響について理解しておくことが重要です。事前に知識を持つことで、冷静な判断と適切な準備につながるでしょう。

監修医師:
齋藤 宏章(医師)
福島県立医科大学放射線健康管理学講座 博士研究員
【専門・資格】
消化器内科、内視鏡
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓内科専門医、カプセル内視鏡認定医
目次 -INDEX-
胆石治療の合併症とリスク
治療にはそれぞれメリットとデメリットがあり、合併症のリスクも存在します。治療を検討する際には、期待される効果とリスクを十分に理解することが重要です。
手術に伴う合併症
腹腔鏡下胆のう摘出術は比較的リスクの低い手術ですが、いくつかの合併症が報告されています。注意が必要なのは胆管損傷です。胆のうと胆管が癒着している場合や、解剖学的変異がある場合に起こりやすく、術中に気づかれないと重大な問題につながる可能性があります。
出血も手術の合併症として挙げられます。腹腔鏡手術での大量出血の頻度は1%未満とされていますが、止血が困難な場合には開腹手術への移行や輸血が必要になることがあります。また、術後出血により再手術が必要になるケースもまれに報告されています。
術後の合併症としては、創部感染、腹腔内膿瘍、腸閉塞などが挙げられます。創部感染の頻度は1〜2%程度で、適切な抗菌薬投与と創部管理により対処されます。また、胆のう摘出後に胆汁が漏れる胆汁漏も、約1%程度の頻度で発生します。多くは自然に治癒しますが、ドレナージや内視鏡的治療が必要になることもあります。
術後の生活への影響
胆のうを摘出しても、肝臓から胆汁は継続的に分泌されるため、消化機能が完全に失われることはありません。ただし、胆のうが果たしていた「胆汁の濃縮と貯蔵」という機能はなくなるため、一時的に消化に影響が出ることがあります。
術後数週間から数ヶ月間は、脂っこい食事をとった後に下痢や軟便が生じやすくなることがあります。これは、濃縮されていない薄い胆汁が持続的に腸管に流れ込むことで、脂肪の消化吸収が一時的に不安定になるためです。多くの場合、時間経過とともに身体が適応し、症状は改善していきます。
術後の食事については、当初は脂肪分を控えめにし、少量ずつ回数を増やして食べることが推奨されます。段階的に通常の食事に戻していき、個人の身体の調子に合わせて調整していくことが大切です。また、一部の方では長期的に下痢が続くこともありますが、その場合は医師に相談し、必要に応じて内服薬などで対処することが可能です。
まとめ
胆のう摘出術を受けた後も、胆管結石が新たに形成される可能性があるため、定期的なフォローアップが必要です。特に術後に消化器症状が続く場合や、異常な腹痛が生じた場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。
胆石は適切な知識と対応により、重症化を防ぐことが期待できる疾患です。右上腹部の痛みや食後の不快感といった初期症状を見逃さず、早めに消化器内科や消化器外科を受診することが重要です。生活習慣の改善により予防も期待できますので、定期的な健康診断を受けながら、自身の健康管理に努めることをおすすめします。気になる症状がある場合には、ためらわずに専門医に相談してください。
