「胆石」は手術で治すべき?入院期間や痛みの少ない治療とは【医師解説】

胆石の治療方針は症状の有無や結石の状態、患者さんの全身状態を総合的に判断して決定されます。無症状の場合は経過観察が選択されることも多い一方で、症状のある胆石には内科的治療や外科的治療が検討されます。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあるため、十分な説明を受けたうえで選択することが大切です。

監修医師:
齋藤 宏章(医師)
福島県立医科大学放射線健康管理学講座 博士研究員
【専門・資格】
消化器内科、内視鏡
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓内科専門医、カプセル内視鏡認定医
目次 -INDEX-
胆石の治療法の選択肢
胆石の治療方針は、症状の有無、結石の状態、患者さんの全身状態などを総合的に判断して決定されます。治療法は大きく保存的治療と外科的治療に分けられます。
経過観察と内科的治療
無症状の胆石が偶然発見された場合、多くのケースでは経過観察が選択されます。ただし、定期的な超音波検査で胆石の状態や胆のうの変化を確認することが推奨されます。
症状が軽度の場合や手術を希望されない場合には、内科的治療が選択肢となります。ウルソデオキシコール酸という薬剤は、コレステロール結石に対して溶解効果を示すことがあります。ただし、効果が期待できるのは、石が小さく(10mm以下)、カルシウムを含まない純粋なコレステロール結石に限られます。また、治療には数ヶ月から1〜2年の長期間を要し、服用を中止すると再発する可能性もあります。
急性胆のう炎に対する初期治療では、絶食、輸液、抗菌薬投与などの保存的治療が行われます。これにより炎症を鎮静化させた後、待機的に手術を行うことが一般的です。ただし、保存的治療で改善しない場合や重症例では、緊急手術が必要になることもあります。
外科的治療と低侵襲手術
症状のある胆石症に対する根本的な治療は、胆のう摘出術です。現在、標準術式となっているのは腹腔鏡下胆のう摘出術で、開腹手術と比較して傷が小さく、術後の回復が早いという利点があります。腹部に4ヶ所程度の小さな穴を開け、カメラと手術器具を挿入して胆のうを摘出します。
手術時間は通常1〜2時間程度で、術後は2〜4日程度の入院で退院できることが多いとされています。社会復帰までの期間も短く、多くの方が術後1〜2週間で日常生活に戻ることができます。ただし、癒着が強い場合や炎症が高度な場合には、開腹手術に移行することもあります。
近年では、より小さな傷で行う単孔式腹腔鏡手術や、ロボット支援下手術なども導入されています。これらの方法は、さらに整容性に優れ、術後の痛みが少ないとされていますが、施設によって実施状況は異なります。手術方法の選択は、患者さんの状態や施設の設備、医師の経験などを考慮して決定されます。どの治療法にもメリットとデメリットがあるため、医師から十分な説明を受けたうえで選択することが大切です。
まとめ
胆のう摘出術を受けた後も、胆管結石が新たに形成される可能性があるため、定期的なフォローアップが必要です。特に術後に消化器症状が続く場合や、異常な腹痛が生じた場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。
胆石は適切な知識と対応により、重症化を防ぐことが期待できる疾患です。右上腹部の痛みや食後の不快感といった初期症状を見逃さず、早めに消化器内科や消化器外科を受診することが重要です。生活習慣の改善により予防も期待できますので、定期的な健康診断を受けながら、自身の健康管理に努めることをおすすめします。気になる症状がある場合には、ためらわずに専門医に相談してください。
