「胆石」と関連する病気とは?糖尿病や脂質異常症との深い関係【医師解説】

胆石は単独で存在するだけでなく、糖尿病や脂質異常症などの代謝性疾患と密接に関連しています。また、胆のう炎や胆管炎、膵炎といった合併症を引き起こすこともあるため、総合的な健康管理が求められます。関連する疾患を理解することで、早期発見や適切な治療選択につながるでしょう。

監修医師:
齋藤 宏章(医師)
福島県立医科大学放射線健康管理学講座 博士研究員
【専門・資格】
消化器内科、内視鏡
消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓内科専門医、カプセル内視鏡認定医
目次 -INDEX-
胆石と関連する病気
胆石は単独で存在することもありますが、他の疾患と関連して発症したり、合併症を引き起こしたりすることがあります。関連する病気を知ることで、総合的な健康管理につながります。
胆石症と併発しやすい疾患
胆石と密接に関連する疾患として、まず糖尿病が挙げられます。糖尿病の患者さんでは、自律神経障害により胆のうの収縮機能が低下し、胆汁が停滞しやすくなります。また、インスリン抵抗性がある場合、肝臓でのコレステロール合成が増加し、胆汁中のコレステロール濃度が上昇することも知られています。
脂質異常症、特に高コレステロール血症や高中性脂肪血症も、胆石形成のリスクを高めます。血中のコレステロールや中性脂肪が高い状態では、肝臓から胆汁中に分泌されるコレステロールも増加するためです。これらの代謝性疾患は相互に関連し合っており、メタボリックシンドロームの一環として捉えることが重要です。
肥満、特に内臓脂肪型肥満は、インスリン抵抗性や脂質代謝異常を介して胆石のリスクを高めます。体格指数(BMI)が25以上の方では、標準体重の方と比較して胆石の発生率が高いことが報告されています。さらに、急激な体重減少も胆石形成を促進するため、適切なペースでの身体の重さの管理が求められます。
胆石から引き起こされる合併症
胆石の一般的な合併症は急性胆のう炎です。胆のう管に石が詰まり、胆のう内の圧力が上昇すると、血流障害や細菌感染が起こりやすくなります。急性胆のう炎では、持続的な右上腹部痛、発熱、白血球増加などの炎症所見が認められ、適切な治療が行われないと胆のうの壊死や穿孔に至る可能性があります。
胆管結石は、胆石が胆管に移動した状態で、黄疸や胆管炎を引き起こします。胆管炎は、胆汁の流れが阻害されることで胆管内に細菌が増殖し、発熱、黄疸、腹痛の三徴(シャルコー三徴)が現れます。重症化すると敗血症やショック状態に至ることもあり、緊急処置が必要になります。ただし、すべての胆管結石が重症化するわけではなく、早期発見と適切な治療により多くの場合は改善が期待できます。
膵炎も胆石に関連する重要な合併症です。胆管と膵管は十二指腸で合流しているため、胆管結石が膵管の開口部を塞ぐと、膵液の流れが阻害され急性膵炎を発症します。胆石性膵炎は急性膵炎の原因として多く、早期の胆石除去が再発予防に重要とされています。
まとめ
胆のう摘出術を受けた後も、胆管結石が新たに形成される可能性があるため、定期的なフォローアップが必要です。特に術後に消化器症状が続く場合や、異常な腹痛が生じた場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。
胆石は適切な知識と対応により、重症化を防ぐことが期待できる疾患です。右上腹部の痛みや食後の不快感といった初期症状を見逃さず、早めに消化器内科や消化器外科を受診することが重要です。生活習慣の改善により予防も期待できますので、定期的な健康診断を受けながら、自身の健康管理に努めることをおすすめします。気になる症状がある場合には、ためらわずに専門医に相談してください。
