「前頭側頭型認知症」の原因となる遺伝子とは?【医師監修】

前頭側頭型認知症の原因の一部は、特定の遺伝子の変異によるものです。約10〜30%が遺伝的要因の関与が強く示唆される家族性のケースとして報告されています。ただし、遺伝的要因があるすべての方が発症するわけではなく、環境要因との複合的な関係も指摘されています。

監修医師:
鮫島 哲朗(医師)
東京逓信病院脳神経外科部長
脳腫瘍 頭蓋底外科センター長
【経歴】
平成2年3月 宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業
平成2年6月 宮崎医科大学(現宮崎大学)脳神経外科入局
平成3年4月 九州大学救急部研修(厚生省研修プログラム)
平成14年4月 Duke University Medical Center, USA
University of Torino , Italy
平成22年2月 NTT東日本関東病院脳神経外科主任医長
平成25年4月 浜松医科大学脳神経外科准教授
令和6年10月 東京逓信病院脳神経外科部長 脳腫瘍頭蓋底外科センター長
【専門・資格】
脳腫瘍 頭蓋底腫瘍 困難な脳外科手術等
医学博士
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医
目次 -INDEX-
前頭側頭型認知症の原因となる遺伝的要因
前頭側頭型認知症の原因の一部は、特定の遺伝子の変異によるもので、約10〜30%が遺伝的要因の関与が強く示唆される家族性のケースとして報告され、遺伝子の変異が原因となることが明らかになっています。ただし、遺伝的要因があるすべての方が発症するわけではなく、環境要因との複合的な関係も指摘されています。
関連する遺伝子変異
前頭側頭型認知症に関連する遺伝子としては、MAPT遺伝子、GRN遺伝子、C9orf72遺伝子などが知られています。MAPT遺伝子の変異は、タウタンパク質の異常を引き起こし、前頭側頭型認知症を発症させます。GRN遺伝子の変異は、プログラニュリンというタンパク質の機能障害を起こし、TDP-43の異常蓄積につながります。C9orf72遺伝子の変異は、前頭側頭型認知症と運動神経疾患の両方を引き起こすことがあります。
これらの遺伝子変異を持つ方は、比較的若い年齢で発症する傾向があります。40代や50代で症状が現れることも珍しくありません。家族内に前頭側頭型認知症の方がいる場合、家族歴がある場合、遺伝カウンセリングを受けることで、遺伝の可能性について詳しく相談できます。ただし、遺伝子変異の有無を知ることは、将来の発症リスクを知るという心理的な影響も考慮した慎重な判断が必要です。ただし、検査を受けるかどうかは個人の選択であり、将来の発症リスクを知ることの心理的影響も考慮する必要があります。
孤発性のケース
一方で、家族歴がなく、遺伝的要因が明らかでない孤発性のケースも多く存在します。孤発性の場合、遺伝子変異以外の要因が発症に関与していると考えられています。加齢、生活習慣、環境要因、ほかの疾患との関連など、さまざまな要素が複合的に影響している可能性があります。しかし、具体的にどのような要因が発症リスクを高めるのかは、まだ十分に解明されていません。
現在、前頭側頭型認知症の発症メカニズムを解明するため、世界中で研究が進められています。孤発性のケースにおいても、何らかの遺伝的な素因が存在する可能性や、後天的な遺伝子の変化が関与している可能性が検討されています。将来的には、発症リスクを予測し、予防的な介入を行えるようになることが期待されています。
まとめ
前頭側頭型認知症は、行動や人格の変化を主症状とする認知症であり、比較的若い年代から発症することが特徴です。前頭葉と側頭葉の萎縮により、社会性の喪失、感情のコントロール障害、言語機能の低下などが生じます。初期段階では記憶は比較的保たれるため、認知症と気づかれにくいこともあります。
原因としては、タウタンパク質やTDP-43の異常蓄積、遺伝的要因が関与しています。進行速度は個人差があるものの、一般的にアルツハイマー型認知症より速く、発症から平均6〜8年で日常生活に重大な支障をきたします。人格変化は前頭葉の機能障害によるものであり、本人の意思とは無関係に生じます。
早期に症状に気づき、専門の医師を受診することで、適切な診断と対応が可能となります。家族や周囲の方は、症状が病気によるものであることを理解し、適切なサポート体制を整えることが重要です。気になる症状がある場合は、神経内科や精神科、物忘れ外来などを受診し、専門の医師の診察を受けることをおすすめします。