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「前頭側頭型認知症」を発症するとどんな判断ができなくなる?【医師監修】

 公開日:2026/02/06
初期症状における記憶と判断力の変化

アルツハイマー型認知症と異なり、初期段階では記憶障害は比較的軽度にとどまります。しかし判断力や実行機能の低下は早期から目立ち始め、日常生活で「何かおかしい」と感じられる変化が徐々に明確になっていきます。記憶の保たれ方と判断力の低下、実行機能の障害について具体的に解説します。

鮫島 哲朗

監修医師
鮫島 哲朗(医師)

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脳神経外科
東京逓信病院脳神経外科部長
脳腫瘍 頭蓋底外科センター長

【経歴】
平成2年3月 宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業
平成2年6月 宮崎医科大学(現宮崎大学)脳神経外科入局
平成3年4月 九州大学救急部研修(厚生省研修プログラム)
平成14年4月 Duke University Medical Center, USA
University of Torino , Italy
平成22年2月 NTT東日本関東病院脳神経外科主任医長
平成25年4月 浜松医科大学脳神経外科准教授
令和6年10月 東京逓信病院脳神経外科部長 脳腫瘍頭蓋底外科センター長

【専門・資格】
脳腫瘍 頭蓋底腫瘍 困難な脳外科手術等
医学博士
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医

初期症状における記憶と判断力の変化

アルツハイマー型認知症と異なり、初期段階では記憶障害は比較的軽度です。しかし判断力や実行機能の低下は早期から目立ち始め、日常生活で「何かおかしい」と感じられる変化が徐々に明確になっていきます。

記憶の保たれ方と判断力の低下

前頭側頭型認知症の初期では、過去の出来事や日常的な物事を記憶する能力は比較的保たれています。昨日の出来事や家族の名前、自分の住所などは覚えていることが多く、この点がアルツハイマー型認知症との大きな違いです。しかし、記憶は保たれていても、それをもとに適切な判断を下すことができなくなります。

例えば、雨が降っていることはわかっていても、傘を持っていくという判断ができないといった状態です。判断力の低下は、金銭管理や重要な意思決定の場面で顕著に現れます。高額な商品を衝動的に購入する、詐欺的な勧誘に簡単に応じてしまう、危険な投資に手を出すといった行動が見られます。また、自分の健康状態を適切に判断できず、明らかに体調が悪くても医療機関を受診しないといったこともあります。周囲の方は、本人の判断が以前と比べて明らかに不適切になっていないか、注意深く観察することが重要です。

実行機能の障害

実行機能とは、目標を設定し、計画を立て、それを実行する能力のことです。前頭側頭型認知症では、この実行機能が早期から障害されます。複数の作業を同時に進めることができなくなり、優先順位をつけることも困難になります。料理をしながら洗濯物を取り込むといった、以前は当たり前にできていたことができなくなります。

仕事の場面では、プロジェクトを計画的に進められない、締め切りを守れない、報告書を適切にまとめられないといった問題が生じます。これらの変化は、周囲から「能力が低下した」「やる気がない」と誤解されることもあります。しかし、本人は努力していても、脳の機能障害により適切に遂行できない状態なのです。家族や職場の方がこうした変化に気づいたら、前頭側頭型認知症の可能性を考え、専門の医師への相談を検討することが望ましいでしょう。

まとめ

前頭側頭型認知症は、行動や人格の変化を主症状とする認知症であり、比較的若い年代から発症することが特徴です。前頭葉と側頭葉の萎縮により、社会性の喪失、感情のコントロール障害、言語機能の低下などが生じます。初期段階では記憶は比較的保たれるため、認知症と気づかれにくいこともあります。

原因としては、タウタンパク質やTDP-43の異常蓄積、遺伝的要因が関与しています。進行速度は個人差があるものの、一般的にアルツハイマー型認知症より速く、発症から平均6〜8年で日常生活に重大な支障をきたします。人格変化は前頭葉の機能障害によるものであり、本人の意思とは無関係に生じます。

早期に症状に気づき、専門の医師を受診することで、適切な診断と対応が可能となります。家族や周囲の方は、症状が病気によるものであることを理解し、適切なサポート体制を整えることが重要です。気になる症状がある場合は、神経内科や精神科、物忘れ外来などを受診し、専門の医師の診察を受けることをおすすめします。

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