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「舌の奥にぶつぶつ」は糖尿病と関係ある?ぶつぶつができたときの治療法も歯科医師が解説!

 公開日:2025/12/12
「舌の奥にぶつぶつ」は糖尿病と関係ある?ぶつぶつができたときの治療法も歯科医師が解説!

舌の奥のぶつぶつに対する治療は、原因によってさまざまです。医療機関では感染症や炎症に応じた薬物療法が行われ、必要に応じて専門的な検査や処置が検討されます。また、日常生活での口腔ケアや生活習慣の見直しが、症状の改善や予防につながります。ここでは、治療法とセルフケアのポイントについて紹介します。

橋村 威慶

監修歯科医師
橋村 威慶(サッカー通りみなみデンタルオフィス)

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【経歴】
1998年 鹿児島大学歯学部 卒業
2002年3月  すなまち北歯科クリニック 開設
2014年2月~2016年3月  東京大学医科学研究所 客員研究員
2019年5月  東京都文京区にサッカー通りみなみデンタルオフィス 開設
2019年6月  特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

【専門・資格・所属】
日本抗加齢医学会 専門医
日本歯周病学会
日本補綴歯科学会
日本アンチエイジング歯科学会

舌の奥のぶつぶつの治療とセルフケア

舌の奥のぶつぶつに対する治療は、原因によって異なります。一般的な治療法と、自宅でできるセルフケアについて理解することで、症状の改善と予防につながります。

医療機関での治療法

感染症が原因の場合には、抗菌薬や抗ウイルス薬、抗真菌薬などが処方されます。細菌感染にはペニシリン系やセフェム系の抗生物質が用いられ、ヘルペスウイルス感染には抗ヘルペスウイルス薬が投与されます。カンジダ感染では、含嗽薬や塗布薬、内服薬などが選択されます。治療期間や投与量は、症状の程度や患者さんの状態によって調整されます。

炎症が強い場合には、ステロイド含有の軟膏や含嗽液が処方されることもあります。痛みが強い場合には、アフタ様のものならばレーザー治療も有効です鎮痛薬や局所麻酔薬を含む含嗽液が有効です。また、ビタミンB群や鉄分の欠乏が背景にある場合には、サプリメントや栄養療法が併用されます。腫瘤性病変や悪性が疑われる場合には、生検による組織診断が行われ、結果に応じて外科的切除や放射線治療、化学療法などが検討されます。治療法の選択には、病変の性状、進行度、患者さんの全身状態などが考慮されます。

日常生活で気をつけるポイント

口腔内を清潔に保つことが基本です。歯磨きは1日2回から3回、丁寧に行い、舌ブラシを使って舌苔を除去することも有効です。ただし、炎症が強いときには過度な刺激を避け、柔らかい歯ブラシを使用しましょう。含嗽は食後や就寝前に行い、刺激の少ないうがい薬を選ぶことが推奨されます。アルコールを含まない含嗽液や、生理食塩水を使用することも、刺激を軽減する方法です。

刺激物の摂取を控えることも大切です。辛いもの、酸味の強いもの、熱すぎる飲食物は症状を悪化させることがあります。アルコールや喫煙も粘膜への刺激となるため、症状がある間は避けるべきでしょう。また、十分な睡眠とバランスの取れた食事、ストレスの軽減など、免疫力を保つための生活習慣も重要です。水分を十分に摂取し、口腔内の乾燥を防ぐことも、粘膜の健康維持に役立ちます。栄養バランスを考慮した食事を心がけ、特にビタミンB群や鉄分を含む食品を積極的に摂取することが推奨されます。

舌の奥のぶつぶつと全身疾患の関係

舌の奥のぶつぶつは、全身疾患のサインとして現れることもあります。口腔内症状と関連する全身疾患について理解することで、早期発見と適切な治療につながります。

免疫力低下と口腔内症状

糖尿病や腎不全、肝疾患、HIVなどの全身疾患では、免疫力が低下し、口腔内に感染症や炎症が生じやすくなります。特に糖尿病では、高血糖状態が続くと細菌や真菌の増殖を招き、カンジダ症や歯周病が悪化しやすくなります。舌の表面が白くなったり、ぶつぶつとした炎症が治りにくかったりする場合には、血糖コントロールの評価が必要です。定期的な血糖値の測定と、適切な治療により、口腔内症状の改善が期待できます。

また、抗がん剤治療や放射線治療を受けている方では、口腔粘膜炎が生じやすく、舌の奥を含む口腔内全体に痛みや潰瘍が出現することがあります。治療中の支持療法として、口腔ケアや鎮痛薬の使用が重要になります。免疫抑制剤を使用している方でも、同様に感染リスクが高まるため、口腔内の異常を早期に発見し、適切に対処することが求められます。主治医と連携し、口腔内の状態を定期的に確認することが、合併症の予防につながります。

ビタミン欠乏と舌の変化

ビタミンB12や葉酸、鉄分の欠乏は、舌炎や舌の萎縮、味覚障害などを引き起こします。特にビタミンB12欠乏では、舌が赤く平滑になり、ヒリヒリとした痛みを伴う「ハンター舌炎」と呼ばれる状態になることがあります。貧血や神経症状を伴うこともあり、血液検査による診断と補充療法が必要です。ビタミンB12の補充により、舌の症状は徐々に改善していくことが期待できます。

鉄欠乏性貧血では、舌乳頭の萎縮や口角炎、爪の変形などが見られることがあります。偏った食生活や消化器疾患、月経過多などが原因となるため、原因疾患の治療と並行して鉄剤の補充が行われます。また、葉酸欠乏も舌炎の原因となり、緑黄色野菜の不足やアルコール多飲が背景にあることが多いです。栄養バランスの見直しとサプリメントの活用が改善につながります。食事内容を見直し、バランスの取れた栄養摂取を心がけることが、予防と治療の基本となるでしょう。

子どもの舌の奥のぶつぶつ

子どもの舌にぶつぶつが見られた場合、保護者の方は不安になることも多いでしょう。小児特有の原因と対応について理解することで、適切な判断ができるようになります。

小児に多い原因疾患

子どもの場合、手足口病やヘルパンギーナなどのウイルス感染症で口腔内に発疹や水疱が生じることがよくあります。手足口病では、手のひらや足の裏、口腔内に小さな水疱ができ、舌の奥にも病変が見られることがあります。発熱や食欲不振を伴い、数日から1週間程度で自然に治癒しますが、脱水に注意が必要です。痛みのために食事や水分摂取が困難になる場合には、こまめな水分補給を心がけましょう。

ヘルパンギーナは、高熱と咽頭痛を特徴とし、軟口蓋や咽頭後壁に小さな水疱や潰瘍が多発します。舌の奥にも炎症が及ぶことがあり、痛みのため食事や水分摂取が困難になることもあります。また、溶連菌感染症では咽頭炎とともに舌が赤く腫れ、表面がイチゴのようにぶつぶつと見えることがあります。これは「イチゴ舌」と呼ばれ、溶連菌感染症の特徴的な所見です。溶連菌感染症は適切な抗生物質治療が必要なため、早めの受診が推奨されます。

保護者が注意すべきサイン

子どもが口を痛がって食事を拒否する場合や、よだれが多くなる場合、高熱が続く場合には、早めに小児科を受診しましょう。脱水症状のサインとして、尿量の減少、皮膚の乾燥、ぐったりとした様子などが見られる場合には、緊急性が高いため速やかな受診が必要です。経口補水液を少量ずつ与えるなど、脱水予防に努めることも大切です。

また、呼吸が苦しそうな場合や、舌の腫れが強くて気道を圧迫している可能性がある場合には、救急外来を受診することが推奨されます。子どもは症状を言葉で正確に伝えることが難しいため、食事の様子や機嫌、睡眠状態などを総合的に観察し、異常を早期に察知することが大切です。日頃から子どもの様子を注意深く観察し、普段との違いに気づくことが、早期対応につながります。不安な場合には、医療機関に相談することをためらわないようにしましょう。

舌の奥のぶつぶつと口腔がんの関係

痛みのないしこりや潰瘍が長期間続く場合、口腔がんの可能性も考慮する必要があります。口腔がんの特徴と早期発見のポイントについて理解することで、適切な対応が可能になります。

口腔がんのリスク因子と症状

口腔がんのリスク因子としては、喫煙と飲酒が挙げられます。特に両方の習慣がある場合、リスクは相乗的に高まります。また、慢性的な機械的刺激(合わない入れ歯や尖った歯による粘膜への刺激)、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、ビタミンA・C・E欠乏なども関連があるといわれています。高齢になるほどリスクは上昇する傾向があり、50歳以上の方では特に注意が必要です。

初期の口腔がんは痛みを伴わないことが多く、白い斑点や赤い斑点、小さな潰瘍、硬いしこりとして現れます。進行すると潰瘍が深くなり、出血しやすくなったり、痛みや嚥下困難が生じたりします。舌がんは口腔がんのなかでも頻度が高く、舌の側縁に好発しますが、舌の奥にも発生することがあります。違和感や異物感が持続する場合には、早めに専門医の診察を受けることが推奨されます。早期発見により、治療の選択肢が広がり、予後の改善が期待できます。

早期発見のための自己チェック

月に1回程度、明るい場所で鏡を使って口腔内を観察する習慣をつけましょう。舌を前に出したり左右に動かしたりして、舌の側面や奥まで確認します。白や赤の斑点、治りにくい潰瘍、硬いしこり、出血しやすい部位などがないかチェックします。鏡を使って舌の裏側や側面もしっかり観察し、左右対称性を確認することも重要です。舌をあっかんべーと出し、まっすぐ出しているつもりでも左右どちらかに偏っている場合も注意が必要です

2週間以上治らない潰瘍や、徐々に大きくなるしこりがある場合には、早めに歯科口腔外科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。早期発見できれば、治療の選択肢が広がり、予後も良好です。定期的な歯科検診も、口腔がんの早期発見に役立ちます。特にリスク因子を持つ方は、年に1回から2回の専門的なチェックが推奨されます。喫煙や飲酒の習慣がある方は、これらの習慣を見直すことも、リスク低減につながります。

舌の奥のぶつぶつに関するよくある質問

患者さんからよく寄せられる質問についてお答えします。疑問を解消することで、適切な対応が可能になるでしょう。

気になる症状への対応

「舌の奥のぶつぶつは自然に治りますか」という質問をよくいただきます。正常な有郭乳頭であれば治療は不要ですし、一過性の刺激や軽度の炎症であれば数日で改善することが多いです。ただし、2週間以上症状が続く場合や、痛みが強い場合、徐々に大きくなる場合には受診が必要です。経過観察を続ける際には、症状の変化を記録しておくと、受診時に有用な情報となります。

「市販の薬で対処できますか」という質問もあります。軽度の口内炎や炎症には、市販の口内炎用軟膏や含嗽液が有効な場合もありますが、原因がはっきりしない場合や症状が改善しない場合には、自己判断せずに医療機関を受診することをおすすめします。特に感染症や全身疾患が背景にある場合には、適切な診断と治療が必要です。市販薬を使用しても改善が見られない場合には、早めに専門医に相談することが大切です。

予防と再発防止

「ぶつぶつができないようにするにはどうすればよいですか」という質問に対しては、日常的な口腔ケアが基本となります。食後の歯磨きや含嗽を習慣化し、舌ブラシで舌苔を除去することで、細菌の増殖を抑えられます。ただし、強くこすると逆に炎症が悪化する可能性があるので、軽く1~2回なでる程度で十分です。舌ブラシで舌乳頭を傷つけてしまうと痛みが増し,回復には10日〜2週間ほどかかるので注意しましょうまた、規則正しい生活とバランスの取れた食事、十分な睡眠により、免疫力を維持することも大切です。ストレス管理や適度な運動も、全身の健康維持に役立ちます。

「再発を防ぐにはどうすればよいですか」という質問に対しては、原因に応じた対策が必要です。ビタミン欠乏が原因であれば栄養バランスの改善、ストレスが原因であればストレス管理、慢性刺激が原因であれば入れ歯の調整や歯科治療などが有効です。繰り返す場合には、全身疾患の有無も含めて精査することが推奨されます。原因を特定し、それに応じた対策を講じることで、再発のリスクを低減できるでしょう。

まとめ

舌の奥にぶつぶつができる原因は、正常な解剖学的構造から感染症、全身疾患、まれに腫瘍性病変までさまざまです。痛みの有無や形状、経過を観察し、2週間以上改善しない場合や増大する場合には、耳鼻咽喉科や歯科口腔外科を受診しましょう。日常的な口腔ケアと生活習慣の見直しが予防につながります。気になる症状がある場合には、自己判断せず専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です。早期発見と早期対応により、多くの場合、良好な経過が期待できます。口腔内の健康は全身の健康と密接に関連しているため、日頃から注意深く観察し、異常を感じたら速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

この記事の監修歯科医師

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