「アスペルガー症候群(ASD)」がADHDと併存する場合の『仕事上の注意点』
公開日:2025/12/06

アスペルガー症候群(※)とADHDの特性が重なると、仕事での課題も複雑になることがあります。注意力の維持が難しく、うっかりミスが多発する一方で、興味のある分野には過度に集中してしまうといった極端な傾向が見られる場合があります。こうした特性に対して、環境の整理整頓や時間管理の工夫、タスクの細分化などの対処法を取り入れることで、業務の質を向上できる可能性があります。ここでは、併存時の具体的な課題と対応策を解説します。
※アスペルガー症候群は、自閉スペクトラム症(ASD)という発達障害の1つで、2013年以降はすべて自閉スペクトラム症(ASD)として一括して扱われるようになりました。このため、現在「アスペルガー症候群」という言葉は、医学的な正式な診断名としては使用されていません

監修医師:
三浦 暁彦(医師)
プロフィールをもっと見る
【経歴】
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医
ADHDとの併存がある場合の仕事上の注意点
両方の特性が加わると、仕事上の課題も複雑になる場合があります。注意力と衝動性への対処
ADHDの不注意の特性により、特性によるうっかりミス(ケアレスミス)が多発する、物をなくす、約束を忘れるといった問題が起こりやすくなることがあります。こうした課題には、環境の整理整頓と仕組み化が有効な場合があります。 デスク周りは必要な物だけを置き、書類やファイルは決まった場所に保管するルールを作りましょう。重要な物は常に同じ場所に置く習慣をつけることで、探し物の時間を減らせます。チェックリストを活用して、確認漏れを防ぐことも大切です。デジタルツールを使う場合は、定期的にバックアップを取ることも忘れないようにしましょう。 衝動性への対処としては、即座に反応せず、一呼吸おいてから行動する練習が役立つ場合があります。メールの送信前に内容を見直す、会議では発言する前に考える時間を取るといった工夫が有効です。薬物療法が効果を示すケースもあるため、専門医と相談しながら治療を進めることも検討できます。ただし、薬の効果や副作用には個人差があり、すべての方に適用できるわけではありません。マルチタスクと過集中のバランス
ADHDの特性として、興味のあることには過度に集中する一方、興味のないことには全く集中できないという極端さがある場合があります。アスペルガー症候群の特定分野へのこだわりと組み合わさると、この傾向がより顕著になることがあります。 過集中している間は、時間を忘れて没頭し、食事やトイレも忘れてしまうことがあります。タイマーやアラームを設定し、定期的に休憩を取るよう自分に促すことが必要です。周囲の人に声をかけてもらうことも有効な方法です。過集中は生産性を高める面もありますが、体調管理とのバランスが重要です。 一方、興味のない業務では集中が続かず、頻繁に気が散ってしまうことがあります。作業を短時間の単位に分け、完了したら小さな休憩を入れるポモドーロ・テクニックなどの時間管理法を試してみましょう。また、興味のある業務と組み合わせることで、モチベーションを維持しやすくなる場合があります。完璧を目指さず、できる範囲で工夫を続けることが大切です。まとめ
アスペルガー症候群とADHDは、それぞれ異なる特性を持つ発達障害ですが、併存することも少なくありません。仕事や日常生活での困難は、特性の理解と適切な対処により軽減できる可能性があります。自分に合った職種や環境を選び、必要な支援を活用することで、能力を発揮できる可能性が広がります。特定分野での才能を持つ方もいますが、すべての方がそれぞれの強みを活かして生きられる社会を目指すことが大切です。困りごとがある場合は、専門医療機関や支援機関への相談をおすすめします。参考文献