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「アスペルガー症候群(ASD)」の人が仕事でぶつかりやすい課題とは? 医師が解説

 公開日:2025/12/04
「アスペルガー症候群(ASD)」の人が仕事でぶつかりやすい課題とは? 医師が解説

職場では、コミュニケーションや環境への適応が求められる場面が多く、アスペルガー症候群(※)の方にとって困難を感じやすい状況が生じることがあります。暗黙の了解や曖昧な指示の理解、感覚過敏による環境ストレスなど、特性によって現れる課題はさまざまです。しかし、適切な対処法や環境調整により、働きやすさを改善できる可能性があります。ここでは、職場で直面しやすい具体的な課題と対応方法をご紹介します。

※アスペルガー症候群は、自閉スペクトラム症(ASD)という発達障害の1つで、2013年以降はすべて自閉スペクトラム症(ASD)として一括して扱われるようになりました。このため、現在「アスペルガー症候群」という言葉は、医学的な正式な診断名としては使用されていません

三浦 暁彦

監修医師
三浦 暁彦(医師)

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【経歴】
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医

アスペルガー症候群の方が仕事で直面しやすい課題

職場環境によってさまざまな形で課題として現れることがありますが、理解と対処法を知ることで改善が期待できます。

コミュニケーションにおける困難

職場でのコミュニケーションは、業務を円滑に進めるうえで欠かせません。しかし、アスペルガー症候群の方にとって、暗黙の了解や空気を読むことが求められる場面は負担となる場合があります。 指示が曖昧だと理解しにくい、会議での雑談についていけない、冗談を文字通りに受け取ってしまうといった状況が生じやすくなります。また、相手の表情や態度から不快感を察知することが難しいため、意図せず失礼な発言をしてしまうこともあります。電話対応や接客など、臨機応変な対応が求められる業務では、特に困難を感じる方が多いでしょう。 こうした課題に対しては、指示を具体的に文書で受け取る、定型的な対応パターンを事前に準備するといった工夫が有効な場合があります。上司や同僚に特性を理解してもらうことも、働きやすさの向上につながる可能性があります。ただし、職場の環境や文化によって受け入れられる程度は異なるため、状況に応じた対応が求められます。

感覚過敏と職場環境の問題

感覚過敏は、アスペルガー症候群の方に多く見られる特性です。オフィスの蛍光灯の光が眩しい、エアコンの音が気になる、香水の匂いが耐えられないといった感覚的な刺激が、集中力の低下や疲労の原因となることがあります。個人差が大きく、特定の刺激にのみ反応する場合もあれば、複数の刺激に敏感な場合もあります。 オープンオフィスでは周囲の会話や物音が気になり、業務に集中できないこともあります。また、人との距離が近いことで不快感を覚える方もいます。こうした環境要因は、本人の能力とは関係なく、パフォーマンスの低下を招く可能性があります。 対処法としては、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを使う、デスクの配置を工夫する、可能であれば個室や静かな環境で作業できるよう配慮を依頼するといった方法があります。合理的配慮の一環として、職場に環境調整を相談することも検討できます。ただし、すべての要望が受け入れられるとは限らないため、優先順位をつけて相談することが現実的です。

まとめ

アスペルガー症候群とADHDは、それぞれ異なる特性を持つ発達障害ですが、併存することも少なくありません。仕事や日常生活での困難は、特性の理解と適切な対処により軽減できる可能性があります。自分に合った職種や環境を選び、必要な支援を活用することで、能力を発揮できる可能性が広がります。特定分野での才能を持つ方もいますが、すべての方がそれぞれの強みを活かして生きられる社会を目指すことが大切です。困りごとがある場合は、専門医療機関や支援機関への相談をおすすめします。

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