「アスペルガー症候群(ASD)」と『ADHD』の両方を持つ人の特徴をご存じですか?
公開日:2025/12/03

アスペルガー症候群(※)とADHDの特性を両方持つ方も少なくありません。診断基準の改訂により、現在では併存診断が可能となり、それぞれの特性に応じた支援を受けられるようになりました。併存する場合、社会的コミュニケーションの困難さに加えて、注意力や衝動性の課題も重なるため、日常生活での対応がより複雑になることがあります。ここでは、併存する割合や診断の重要性、現れやすい特徴についてご紹介します。
※アスペルガー症候群は、自閉スペクトラム症(ASD)という発達障害の1つで、2013年以降はすべて自閉スペクトラム症(ASD)として一括して扱われるようになりました。このため、現在「アスペルガー症候群」という言葉は、医学的な正式な診断名としては使用されていません

監修医師:
三浦 暁彦(医師)
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【経歴】
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医
2018年富山大学医学部医学科卒業。慶應大学病院、国立病院機構久里浜医療センター、国立国際医療研究センター国府台病院等で研鑽を積む。自身が不登校、うつ病となった経験から、誰でも気軽にかかれる医療を目指して2023年6月に「おおかみこころのクリニック」を開院。医師偏在等の精神科医療の問題点を克服するため、遠隔診療の研究にも従事し、2025年9月にAIを用いたオンライン診療所「ココフィー」をリリース。著書「脱うつのトリセツ」
【資格】
日本精神神経学会 専門医
アスペルガー症候群とADHDの併存について
両方の特性を持つことで、日常生活や仕事での課題が複雑になる場合があります。併存する割合と診断の重要性
研究によれば、自閉スペクトラム症(ASD)の方のうち、ADHDの特性も併せ持つ方が少なくありません。逆に、ADHDと診断された方の中にも、自閉スペクトラム症の特性を持つ方が一定数います。ただし、これらの数値は調査対象や評価方法によって変動する可能性があり、あくまで目安として理解する必要があります。 以前の診断基準(DSM-IV)では併存診断ができませんでしたが、診断基準の改訂(DSM-5)により、現在では両方の診断を同時に受けることが可能になりました。この改訂により、以前は見逃されていた特性が適切に評価されるようになっています。正確な診断を受けることで、それぞれの特性に応じた適切な支援や治療を受けられる可能性が高まります。 専門医による丁寧な問診と評価が、的確な診断につながります。診断までには時間がかかることもありますが、焦らず継続して医療機関と連携することが大切です。診断を受けることで、自分の特性を客観的に理解し、必要な配慮を求める根拠にもなります。併存時に現れやすい特徴
両方の特性を持つ場合、社会的コミュニケーションの困難さに加えて、注意力の維持や衝動のコントロールにも課題が生じることがあります。たとえば、特定の興味に集中しすぎて他のことが手につかなくなる一方で、興味のないことには全く集中できないといった極端な傾向が見られる場合があります。 時間管理や優先順位づけの困難さも顕著になりやすく、計画を立てても実行できない、締め切りを守れないといった問題が起こる可能性があります。感情のコントロールも難しくなる傾向があり、予期せぬ変化に対して強い不安や混乱を感じやすくなることがあります。 こうした特性が重なることで、学校や職場での適応がより困難になるケースもあります。一方で、適切な支援や環境調整により、生活の質を改善できる可能性も十分にあります。個々の特性を理解し、それぞれに対応した工夫を重ねることが重要です。まとめ
アスペルガー症候群とADHDは、それぞれ異なる特性を持つ発達障害ですが、併存することも少なくありません。仕事や日常生活での困難は、特性の理解と適切な対処により軽減できる可能性があります。自分に合った職種や環境を選び、必要な支援を活用することで、能力を発揮できる可能性が広がります。特定分野での才能を持つ方もいますが、すべての方がそれぞれの強みを活かして生きられる社会を目指すことが大切です。困りごとがある場合は、専門医療機関や支援機関への相談をおすすめします。参考文献