「中性脂肪を下げる」にはどんな食生活が基本となる?【医師監修】

食事の内容やタイミングを見直すことは、中性脂肪の数値改善に直結する重要な取り組みです。毎日の食卓で何を選び、どう食べるかによって、身体の中での脂質の代謝は大きく変わってきます。ここでは、無理なく続けられる食生活改善のポイントをご紹介します。

監修医師:
濱木 珠恵(ナビタスクリニック新宿)
北海道大学医学部を卒業後、国立国際医療センターにて研修。
虎の門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院での血液疾患診療を経て、2012年にナビタスクリニック東中野院長、2016年よりナビタスクリニック新宿院長に就任。
貧血外来や女性内科などで女性の健康をサポート。
【専門・資格・所属】
血液内科、貧血、女性内科、内科一般
日本血液学会 専門医
日本内科学会 認定医
中性脂肪を下げるための食生活の基本
中性脂肪の改善には、日々の食事内容を見直すことが不可欠です。食べる内容やタイミングを少し変えるだけでも、数値が安定してくるケースは多くあります。ここでは具体的な食生活のポイントを紹介します。
糖質と脂質のバランスを整える
中性脂肪を下げるためには、まず糖質の摂取量を適切にコントロールすることが重要です。白ご飯やパン、パスタなどの主食の量を一度に減らすのは難しいため、いつもの7〜8割程度に減らし、代わりに野菜や海藻類でボリュームを補うと満足感を保ちやすくなります。糖質の質を見直すことも大切です。白米を玄米や雑穀米に変える、パンは全粒粉のものを選ぶといった工夫も、食物繊維が増えて血糖値の上昇がゆるやかになります。
脂質の種類にも注目しましょう。肉類の脂身やバター、生クリームなどに多く含まれる飽和脂肪酸は、摂りすぎると中性脂肪を上げやすくなります。そのため、血中脂質を改善する作用があると知られている魚に含まれるEPAやDHAといった不飽和脂肪酸を積極的に摂取するといいでしょう。青魚であるサバやイワシ、サンマなどは特におすすめです。
なお、油を完全に抜くのはNGです。脂質はホルモンの材料や細胞膜の構成にも必要な栄養素。大切なのは「良い油を適量摂る」ことです。オリーブオイルやアマニ油、えごま油などをサラダやスープに少し加えると、風味も豊かになり健康的でしょう。
食物繊維を積極的に取り入れる
食物繊維は糖質や脂質の吸収をゆるやかにし、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。野菜や海藻類、きのこ類、豆類などに豊富に含まれており、これらを毎食取り入れることで中性脂肪の上昇を抑制できる可能性があります。
特に水溶性食物繊維は、腸内で余分なコレステロールや中性脂肪を吸着し、体外への排出を促す作用があることが報告されています。わかめやもずくなどの海藻類、オクラや納豆などのネバネバ食材、果物ではリンゴやキウイフルーツなどがおすすめです。食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」の習慣も、野菜の食物繊維が糖の吸収をゆるやかにし、血糖値の急上昇を防ぐための効果が期待できます。外食やコンビニ食が多い人は、みそ汁やスープに野菜をプラスする、具だくさんスープを選ぶなど、できる範囲で工夫してみるといいでしょう。ちょっとした選択の積み重ねが、長期的な改善につながります。
まとめ
中性脂肪の改善は、短期間では実現しません。しかし、日々の食生活や飲み物の選択、適度な運動習慣を積み重ねることで、徐々に数値の変化を感じられる方もいらっしゃいます。健康診断で異常を指摘された場合は、放置せず早めに対処することが重要です。再検査や精密検査が必要な場合は、医療機関の指示に従い、必要に応じて専門の医師の診察を受けてください。中性脂肪は生活習慣の鏡ともいえる指標です。今日からできる小さな改善を始めることで、将来の健康リスクを減らせる可能性があります。