「中性脂肪値が高くなる原因」はご存知ですか?【医師監修】

日々の何気ない食生活の選択や、運動習慣の有無が、実は血液中の中性脂肪値に大きな影響を及ぼしています。数値が高いと指摘されたとき、その背景にはどのような要因があるのでしょうか。原因を正しく理解することで、効果的な改善策を見つける手がかりになるでしょう。

監修医師:
濱木 珠恵(ナビタスクリニック新宿)
北海道大学医学部を卒業後、国立国際医療センターにて研修。
虎の門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院での血液疾患診療を経て、2012年にナビタスクリニック東中野院長、2016年よりナビタスクリニック新宿院長に就任。
貧血外来や女性内科などで女性の健康をサポート。
【専門・資格・所属】
血液内科、貧血、女性内科、内科一般
日本血液学会 専門医
日本内科学会 認定医
目次 -INDEX-
中性脂肪が高くなる主な原因
中性脂肪値の上昇には、日常生活のさまざまな要因が関わっています。食事・運動・ストレス・睡眠といった身近な要素が、少しずつ積み重なって数値の上昇につながります。原因を把握することで、効果的な対策を立てることができるでしょう。
食生活による影響
中性脂肪値を上げる大きな要因として、食事内容が挙げられます。特に糖質の過剰摂取は中性脂肪の合成を促進します。白米やパン、麺類などの精製された炭水化物は、体内で素早く糖に変わり、血糖値を急上昇させ、余剰となった糖質が肝臓で中性脂肪へと変換されます。甘いお菓子や清涼飲料水、エナジードリンク、カフェラテなども意外な落とし穴です。「砂糖を入れていないから大丈夫」と思って飲んでいるカフェオレでも、牛乳やクリーマー由来の糖質が多く含まれていることがあります。
また揚げ物、ラーメン、焼肉、スナック菓子など、脂質の摂取量が過剰な食生活も数値上昇の要因となります。意外と見落とされがちなアルコールの飲みすぎも注意が必要です。アルコールは肝臓で分解される際に中性脂肪の合成を促進し、さらにおつまみとして高カロリーな食品を一緒に摂取しがちなため、相乗的に数値を上げる二重の要因となります。たとえお酒の量が多くなくても、毎晩の晩酌が習慣になっている方は要注意です。
「食べすぎ」「飲みすぎ」は一日だけでは問題になりませんが、毎日続くことで確実に体内に脂肪が蓄積されていきます。中性脂肪の管理は、ただ食べるのを我慢することではありません。**食べ物や飲み物、量を選ぶ“賢い選択”**から始まります。日々の食事内容を見直すことは、中性脂肪管理の第一歩といえるでしょう。
運動不足と代謝の低下
デスクワーク中心の生活や移動手段の機械化により、現代人の身体活動量は大幅に減少しています。身体活動量が少ないと、摂取したエネルギーが消費されずに体内に蓄積されます。運動不足は筋肉量の減少を招き、基礎代謝が低下することで、さらに脂肪が燃焼されにくい身体になるという悪循環を生みます。これは「以前と同じ食事をしているのに太るようになった」と感じる中年以降の方に特によく見られる傾向です。
日常生活の中でできる動きを取り入れるだけでも、身体は少しずつ変わっていきます。たとえば、通勤時に一駅分歩く、エスカレーターではなく階段を使う、買い物は少し遠いスーパーまで歩くなど、これらの積み重ねが代謝を高め、脂肪の燃焼を助けてくれるでしょう。特にウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動は、中性脂肪を直接エネルギーとして消費するため、数値改善に効果が期待できるとされています。10分程度から始めて、無理のない範囲で身体を動かす習慣を取り入れることが大切です。
まとめ
中性脂肪の改善は、短期間では実現しません。しかし、日々の食生活や飲み物の選択、適度な運動習慣を積み重ねることで、徐々に数値の変化を感じられる方もいらっしゃいます。健康診断で異常を指摘された場合は、放置せず早めに対処することが重要です。再検査や精密検査が必要な場合は、医療機関の指示に従い、必要に応じて専門の医師の診察を受けてください。中性脂肪は生活習慣の鏡ともいえる指標です。今日からできる小さな改善を始めることで、将来の健康リスクを減らせる可能性があります。