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「中性脂肪」は体内でどんな役割を担っているかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/12/19
中性脂肪とは何か—身体での役割と基準値

中性脂肪という名称を耳にすると、どうしても「身体に悪いもの」という印象を持ちがちですが、実際には生命活動を支える大切なエネルギー源でもあります。適切な量であれば健康維持に欠かせない一方、過剰になると深刻な健康リスクを招く可能性があります。ここでは、中性脂肪が身体の中でどのような役割を果たしているのか、そして健康診断で用いられる基準値について詳しく見ていきましょう。

濱木 珠恵

監修医師
濱木 珠恵(ナビタスクリニック新宿)

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【経歴】
北海道大学医学部を卒業後、国立国際医療センターにて研修。
虎の門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院での血液疾患診療を経て、2012年にナビタスクリニック東中野院長、2016年よりナビタスクリニック新宿院長に就任。
貧血外来や女性内科などで女性の健康をサポート。

【専門・資格・所属】
血液内科、貧血、女性内科、内科一般

日本血液学会 専門医
日本内科学会 認定医

中性脂肪とは何か—身体での役割と基準値

中性脂肪という言葉はよく耳にしますが、「太る原因」「不健康のもと」といったネガティブな印象で捉えられがちです。しかし実際には、私たちが生きていくうえで欠かせないエネルギー源でもあります。ここでは中性脂肪の基本的な機能と、健康診断で用いられる基準値について説明します。

中性脂肪の身体における機能

中性脂肪は、食事から摂取した脂質や糖質が体内で変換されて作られる脂質の一種です。トリグリセリドとも呼ばれ、主に皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。私たちが身体を動かすときに必要な主要なエネルギー源であり、体温を保つ役割も担っています。また、臓器を外部の衝撃から守るクッションとしても機能しています。
適量であれば健康維持に欠かせない物質ですが、過剰に蓄積されると血液中の中性脂肪濃度が上昇し、さまざまな健康リスクを引き起こす可能性があります。使われずに余った中性脂肪は血液中の濃度を上昇させ、これが動脈硬化(血管が硬くなり、詰まりやすくなる状態)や心筋梗塞などのリスクを高める要因になります。特に内臓脂肪の増加は、メタボリックシンドロームや生活習慣病との関連が深いとされています。エネルギーとして消費されなかった余剰分が蓄積され続けることで、身体に負担をかけることになります。

健康診断における基準値と判定区分

健康診断では、血液検査により血中の中性脂肪濃度を測定します。日本動脈硬化学会が示す基準では、空腹時の中性脂肪値が150mg/dL未満を正常範囲としています。150mg/dL以上になると脂質異常症の可能性があると診断され、医療機関での経過観察や生活習慣の改善指導が必要となる場合があります。
判定区分としては、150〜199mg/dLが軽度高値、200〜499mg/dLが中等度高値、500mg/dL以上が高度高値とされます。特に500mg/dL以上の場合は、重篤な病態である急性膵炎(膵臓に強い炎症がおこり、重症化の場合10-20%で命の危険性がある)のリスクが非常に高くなるため、速やかな専門医の診察と医療介入が求められます。ただし、食後は誰でも数値が上昇するため、正確な評価には空腹時採血が原則です。検査を受ける際は、遅い時間の食事や飲酒を避けるなど、指定された条件を守ることが重要になります。

まとめ

中性脂肪の改善は、短期間では実現しません。しかし、日々の食生活や飲み物の選択、適度な運動習慣を積み重ねることで、徐々に数値の変化を感じられる方もいらっしゃいます。健康診断で異常を指摘された場合は、放置せず早めに対処することが重要です。再検査や精密検査が必要な場合は、医療機関の指示に従い、必要に応じて専門の医師の診察を受けてください。中性脂肪は生活習慣の鏡ともいえる指標です。今日からできる小さな改善を始めることで、将来の健康リスクを減らせる可能性があります。

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