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更年期障害の身体・精神症状と日常生活への影響 原因と対処法を医師が解説

 公開日:2025/12/11
更年期障害の身体・精神症状と日常生活への影響:原因と対処法を医師が解説

更年期を迎えると、ホットフラッシュや動悸、めまい、頭痛など身体に多様な変化が現れます。これらの症状は、エストロゲンの減少と自律神経の乱れが複雑に絡み合って起こるもので、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。本記事では、更年期に現れやすい代表的な身体症状とその背景について解説します。早めに症状を理解し、適切な対処法を知ることで、生活の質を保ちながら更年期を乗り越えていきましょう。

月花 瑶子

監修医師
月花 瑶子(医師)

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【経歴】
杉山産婦人科 
東京都渋谷区 杉山クリニックSHIBUYA 勤務

【資格】 
産婦人科専門医
生殖医療専門医

更年期障害の代表的な身体症状

更年期障害の症状は、身体面と精神面の両方に現れます。ここでは、まず身体に現れる代表的な症状について解説します。日常生活に支障をきたすこともあるため、早めの対処が大切です。

ホットフラッシュと発汗の特徴

ホットフラッシュは、更年期障害の中でも代表的な症状で、多くの方が経験します。突然、顔や上半身が熱くなり、ほてりや大量の発汗を伴うことが特徴です。症状は数分から長くても10分程度で治まることが多いですが、1日に何度も繰り返す場合もあります。

ホットフラッシュは、エストロゲンの減少によって体温を調整する脳の視床下部が影響を受けることで起こるといわれています。わずかな体温上昇でも身体が過剰に反応し、熱を放出しようとして、血管を拡張させることで発汗が生じるのです。

この症状は、日中の社会活動中や夜間の睡眠中にも起こります。特に夜間のホットフラッシュは寝汗として現れ、寝具や衣類を濡らすほどの発汗をすることもあり、睡眠が妨げられ睡眠不足が続くと日中の疲労感や集中力低下の原因となることも少なくありません。

動悸・めまい・頭痛などの循環器系症状

更年期には、動悸やめまい、頭痛などの症状を訴える方も多くいます。動悸は自律神経の乱れにより心拍数の調節が不安定になることで、安静時でも心臓がドキドキと強く打つ感覚や、脈が速く感じられる症状です。

めまいは、血圧の変動や内耳の機能変化、自律神経の不調などが複合的に関わっていることが多く、立ちくらみのようにふらつく感覚や、周囲が回転するような感覚として現れます。急に立ち上がったときに起こりやすく、転倒のリスクもあるため注意が必要です。

頭痛もホルモン変動によって血管や神経の働きを刺激することで起こり、片頭痛のようなズキズキとした痛みや、締め付けられるような緊張型頭痛が現れることがあります。もともと頭痛持ちの方は悪化することもあります。

これらの症状は、仕事や家事の中に症状が出ると、集中力が低下し、パフォーマンスに影響が出ることもあるでしょう。頻繁に起こる場合や、生活に支障をきたす場合には、医療機関で相談することが大切です。

更年期障害の精神・神経症状

更年期障害は、身体症状だけでなく、精神面や神経機能にも変化が現れます。気分の落ち込みやイライラ、記憶力の低下などは、本人だけでなく周囲との関係にも影響を及ぼすことがあります。ここでは、更年期に特徴的な精神・神経症状について説明します。

イライラ・不安感・抑うつ気分の背景

更年期には、感情のコントロールが難しくなり、些細なことでイライラしたり、理由のない不安を感じたりすることがあります。これまで気にならなかったことが気になるようになったり、涙もろくなったりする方もいます。こうした変化は、エストロゲンの減少が関係しています。

エストロゲンは、セロトニンやドーパミンといった気分を安定させる神経伝達物質の働きを調整する役割を持っています。エストロゲンが減少すると、神経伝達物質のバランスが崩れ、気分が不安定になりやすくなります。その結果、イライラや不安感、抑うつ気分といった精神症状が現れるのです。

更年期はライフステージの変化が重なる時期でもあります。子どもの独立や親の介護、職場での立場の変化など、環境的ストレスが加わることで、精神的な負担がさらに大きくなることもあります。こうした社会的・心理的要因が、ホルモン変動による症状と相互に影響し合い、症状を複雑にしていることも少なくありません。気分の落ち込みが長く続く場合は、うつ病などの可能性もあるため、早めの受診が勧められます。

記憶力低下・集中力の減退

更年期に入ると、物忘れが増えたり、集中力が続かないと感じる方も多いです。約束を忘れたり、話したいことが思い出せなくなったり、作業の途中で何をしていたかわからなくなるといった経験は、多くの方が感じる症状です。

これらの認知機能の変化も、エストロゲンの減少が関係していると考えられています。エストロゲンは、記憶や学習をつかさどる海馬という脳の部位に関わっており、その働きが弱まることで一時的に記憶力や情報処理能力を低下させます。またホットフラッシュなどによる睡眠の質の低下も、脳の疲労を増やす要因のひとつです。

ただし、更年期の記憶力低下は、認知症とは異なります。認知症では進行性に記憶や判断力が失われていきますが、更年期の症状は一時的なものです。メモやスケジュールアプリの活用、作業を細かく区切るといった日常生活の工夫や治療により、多くの場合は症状が軽減されます。

更年期障害のその他の症状

更年期障害には、ホットフラッシュや気分の変化以外にも、さまざまな身体の不調が現れます。これらは見過ごされやすい症状ですが、生活の質に大きく関わってきます。ここでは、泌尿器系や関節・筋肉の症状について解説します。

関節痛・筋肉痛と運動器系の変化

更年期には、手指のこわばりや膝・腰・肩の慢性的な痛みなど、関節や筋肉に違和感を覚える方が少なくありません。これらはエストロゲンの減少により、関節周囲の組織や筋肉の柔軟性が低下するためです。関節軟骨や腱、靭帯などの結合組織の修復力が低下することで、炎症が起こりやすくなり、筋力の低下が関節への負担を増やすことで、痛みを引き起こす要因となります。

関節痛や筋肉痛は、日常生活の動作を制限し、活動量の低下につながることがあります。痛みを避けようとして動かさないでいると、さらに筋力が低下し、症状が悪化する悪循環に陥ることもあります。適度な運動やストレッチを続けることが、症状の改善と予防に有効とされています。

ただし痛みが強い場合や、腫れや変形を伴う場合には、関節リウマチなどの疾患の可能性も考えられるため、医師の診察を受けましょう。

泌尿器・腟の乾燥や頻尿

泌尿器系や生殖器系にも変化が現れます。腟の乾燥感や性交痛、頻尿や尿漏れといった症状は代表的です。これらの症状もエストロゲンが減少することで起こります。

腟や膀胱の粘膜が薄くなり乾燥しやすくなることで、腟内の自浄作用が低下し、細菌感染が起こりやすくなります。また膀胱や骨盤底筋の機能も弱くなるため、頻尿や尿意切迫感、尿漏れが起こりやすくなります。特にくしゃみや笑った拍子に尿が漏れる腹圧性尿失禁は、更年期以降の女性に多く見られる症状です。

これらの症状は、デリケートな問題であるため医療機関で相談しにくいと感じる方も多いですが、治療で改善するケースがほとんどです。骨盤底筋トレーニングや腟用クリーム、漢方薬など、症状に合った方法でケアできます。気になる症状がある場合は、早めに婦人科や泌尿器科に相談しましょう。

まとめ

更年期障害は、女性のライフステージにおいて避けて通れない時期ですが、適切な知識と対応により、症状を軽減し生活の質を保つことが可能です。症状の始まる時期や現れ方には個人差がありますが、早期に気づき、専門の医師に相談することが重要です。ホルモン補充療法、薬物療法、漢方薬など、多様な治療選択肢があるため、自身の体質や希望に合った方法を選ぶことができます。症状を我慢せず、医療機関で相談し、前向きに更年期を乗り越えていきましょう。

この記事の監修医師

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