「胃がんの原因」と「家族歴」との関係とは?【医師監修】

家族内に胃がんの方がいる場合、発症リスクが約2〜3倍高まるとされています。この背景には、ピロリ菌感染の共有、類似した生活習慣、遺伝的素因という複数の要因が関係しています。ここでは、家族歴がある方が知っておくべきリスク評価と対策について解説します。

監修医師:
水野 靖大(マールクリニック横須賀)
京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院、北野病院、日赤和歌山医療センター、東京大学医科学研究所附属病院などで腹部外科医として患者の全身管理や救急の現場に従事。
2012年にマールクリニック横須賀(神奈川県横須賀市)を開院し、院長を務める。
【専門・資格・所属】
日本外科学会 外科専門医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本旅行医学会 旅行医学認定医
家族歴と胃がんの主要な原因の重要性
第一親等に胃がんの患者さんがいる場合、胃がんのリスクが約2〜3倍高まると報告されています。この背景には、幼少期に家族内でピロリ菌に感染した可能性、塩分の多い食事など類似した生活習慣、稀なケースですががんにかかりやすい遺伝的素因、という3つの側面があります。
家族性胃がんとそのリスク評価
家族内に胃がん患者さんが複数いる場合、その原因を多角的に考える必要があります。最も多いのは、ピロリ菌感染や食生活といった環境要因を家族で共有しているケースです。そのため、家族に胃がん歴がある場合は、まずご自身のピロリ菌感染の有無を確認することが非常に重要です。
遺伝性胃がんの中でも特に知られているのが、遺伝性びまん性胃がん(HDGC)です。これはCDH1という遺伝子の変異によって引き起こされる稀な疾患ですが、発症すると若年でびまん型胃がんを発症するリスクが極めて高くなります。家族内に若年発症の胃がん患者さんが複数いる場合は、遺伝カウンセリングを検討しましょう。
家族歴がある方は、症状がなくても定期的な内視鏡検査を受けることが重要です。検査開始年齢は、家族内発症年齢より5〜10歳早い時期からの検査を検討することが提案されています。
遺伝子変異と個別化予防の可能性
近年の研究により、胃がん発症に関与する複数の遺伝子変異が明らかになってきました。これらの遺伝子変異は、DNA修復機構の異常や細胞増殖の制御不全を引き起こすことで、がん化を促進します。
遺伝子検査により個人の発がんリスクを評価し、リスクに応じた予防戦略を立てる個別化予防の取り組みも進められています。ただし、遺伝子検査の意義や限界については専門家と十分に相談する必要があります。遺伝情報は本人だけでなく家族にも影響を及ぼす可能性があるため、慎重な判断が求められます。
現時点では、家族歴がある方は遺伝子検査の有無にかかわらず、定期的な内視鏡検査とピロリ菌検査・除菌を行うことが重要な予防策といえます。また、禁煙やバランスの取れた食生活といった生活習慣の改善も、発症リスクの低減に寄与します。
まとめ
胃がんの主な原因はピロリ菌感染であり、早期発見・早期治療によって完治が期待できるがんです。まずはご自身のピロリ菌感染の有無を知り、感染している場合は除菌治療を受けることが効果的な予防策です。そのうえで、年齢やリスク因子(ピロリ菌感染歴、萎縮性胃炎、家族歴など)に応じて定期的な内視鏡検査を受けることで、胃がんの早期発見につながるでしょう。気になる症状がある場合や、ご自身の胃がんリスクについて不安がある場合は、消化器内科の医療機関に相談することをおすすめします。