難病の治療には長期間の医療が必要となり、経済的負担が大きくなる場合があります。日本では指定難病患者さんに対する医療費助成制度が整備されており、世帯の所得に応じた自己負担上限額が設定されています。本章では、医療費助成制度の申請方法、自己負担額の仕組み、助成の対象範囲について具体的に解説し、患者さんが経済的支援を受けながら治療を継続できる仕組みを説明します。
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
難病に対する医療費助成制度
難病の治療には長期間の医療が必要となり、経済的負担が大きくなる場合があります。日本では、指定難病患者さんに対する医療費助成制度が整備されており、自己負担の軽減が図られています。
指定難病医療費助成制度は、指定難病と診断され、一定の重症度基準を満たす患者さんが対象です。申請には、指定医が作成する臨床調査個人票(診断書)が必要で、都道府県の窓口に提出します。認定されると医療受給者証が交付され、指定医療機関での医療費が助成されます。申請から認定までには数ヶ月かかる場合もあるため、早めの手続きが推奨されます。
自己負担額と所得区分
医療費助成を受けても、一定の自己負担は発生します。自己負担額は、世帯の所得に応じて段階的に設定されており、月額上限が定められています。生活保護世帯は自己負担が免除され、市町村民税非課税世帯は月額2,500円または5,000円、一般所得世帯は月額5,000円から30,000円の範囲で、所得に応じた上限額が適用されます。
「重症患者認定」を受けた場合、所得にかかわらず自己負担上限が軽減されます。重症度基準を満たさない軽症者であっても、医療費が高額な場合(年間33,330円以上)は「軽症高額該当」として助成対象となります。これにより、幅広い患者さんが経済的支援を受けられる仕組みとなっています。所得区分の認定には世帯全体の所得が関係するため、家族構成や収入状況によって自己負担額が変わります。
助成の対象範囲と利用方法
医療費助成の対象は、指定難病に関連する医療費です。診察、検査、投薬、注射、手術、入院などが含まれます。訪問看護や指定訪問看護事業者によるサービスも対象です。一方、指定難病と関係のない医療(風邪や怪我など)、入院時の食事療養費、差額ベッド代などは対象外です。
医療受給者証は、指定医療機関で提示することで利用できます。月ごとに自己負担上限額まで支払い、複数の医療機関を受診した場合でも、合算して上限額を超えた分は助成されます。薬局での処方薬も対象となるため、医療機関と薬局の両方で受給者証を提示します。受給者証の有効期間は原則1年で、更新手続きが必要となります。
まとめ
難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。
症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。