先天性難病の診断には、遺伝学的検査が重要な役割を果たします。遺伝子解析技術の進歩により、以前は診断困難だった疾患も確定診断が可能になりました。遺伝カウンセリングでは、遺伝形式や再発リスクについて正確な情報提供を行い、患者さんやご家族の意思決定を支援します。本章では、遺伝カウンセリングの重要性と、小児期から成人期への移行支援について詳しく説明します。
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
先天性難病の診断と治療
先天性難病の診断には、遺伝学的検査が重要な役割を果たします。遺伝子解析技術の進歩により、以前は診断困難だった疾患も確定診断が可能になりました。
遺伝カウンセリングの重要性
先天性難病では、遺伝形式や再発リスクについて正確な情報提供が必要です。遺伝カウンセリングは、遺伝の専門家が疾患の遺伝学的情報、検査の意義、家族計画への影響などを説明し、患者さんやご家族の意思決定を支援するプロセスです。
常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖遺伝など遺伝形式により、次子の発症リスクが異なります。出生前診断や着床前診断という選択肢もありますが、倫理的・心理的な側面も含め、十分な情報提供と支援が必要です。遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医が、中立的な立場で相談に応じます。遺伝カウンセリングは、医学的情報の提供だけでなく、心理的支援や家族関係への配慮も含まれます。
小児期から成人期への移行支援
先天性難病を持つ患者さんは、小児期に小児科で診療を受けますが、成人後も継続的な医療が必要です。成人診療科への移行(トランジション)は、重要な課題となっています。小児期の主治医との信頼関係が強い一方で、成人期特有の問題(就労、結婚、妊娠・出産など)には成人診療科の専門性が求められます。
移行支援プログラムでは、計画的に移行準備を進めます。患者さん自身が自分の病気を理解し、自己管理能力を獲得できるよう、教育的支援を行います。小児科医と成人診療科医が連携し、診療情報を共有しながら段階的に移行を進めることで、医療の継続性が保たれます。移行は一度の転科ではなく、数年をかけた継続的なプロセスとして捉えることが重要です。
まとめ
難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。
症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。