先天性の難病は、生まれつき遺伝子の変異や染色体異常により発症する疾患群で、小児期から症状が現れる場合が多く、成長・発達に影響を及ぼします。筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症などの遺伝性神経筋疾患、22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリ症候群などの染色体異常が代表的です。本章では、これらの疾患の特徴と、成長に応じて変化する医療ニーズについて解説します。
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
先天性の難病とその特徴
先天性の難病は、生まれつき遺伝子の変異や染色体異常により発症する疾患群です。小児期から症状が現れる場合が多く、成長・発達に影響を及ぼします。
遺伝性神経筋疾患
遺伝性神経筋疾患には、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、シャルコー・マリー・トゥース病などがあります。筋ジストロフィーは、筋肉の変性と筋力低下が進行する疾患群で、デュシェンヌ型は男児に発症し、学童期に歩行困難となる場合があります。心筋障害や呼吸筋障害も伴うため、多面的な管理が必要です。進行の速度には個人差があり、適切な管理により予後が改善される可能性もあります。
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、脊髄の運動神経細胞が変性する疾患で、重症型では乳児期に発症し、呼吸筋麻痺により生命予後が不良となる場合があります。しかし、近年承認された遺伝子治療薬や核酸医薬により、早期治療開始例では運動機能の改善が報告されています。新生児スクリーニングへの導入も進められており、より早期の治療介入が期待されます。ただし、治療効果には個人差があり、発症時期や重症度によって予後が異なります。
染色体異常と先天奇形症候群
染色体異常による難病には、22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群)、プラダー・ウィリ症候群、アンジェルマン症候群などがあります。これらは、複数の臓器に異常をきたし、知的障害、発達障害、内分泌異常などを伴う場合があります。
22q11.2欠失症候群では、心奇形、口蓋裂、免疫不全、低カルシウム血症などが見られます。早期から多診療科での管理が必要となり、成長に応じて必要な医療や支援が変化します。プラダー・ウィリ症候群では、乳児期の筋緊張低下、幼児期以降の過食と肥満、知的障害が特徴で、生涯にわたる体重管理と行動支援が課題となります。染色体異常による難病は、症状の現れ方に個人差が大きく、個別化された支援が重要です。
まとめ
難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。
症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。