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「難病の壁」痛みや下痢で社会参加が困難に? 患者が直面する生活の課題

 公開日:2025/11/30

難病の多くは、身体機能の低下、疲労感、痛み、感覚障害などにより、日常生活に何らかの制限や困難をもたらします。感覚障害や慢性疼痛は外見からは分かりにくく、周囲の理解を得にくい課題があります。また、内臓機能の障害は、外出制限や透析通院など生活リズムに大きな影響を及ぼします。本章では、これらの症状が生活に与える具体的な影響と、その対処方法について解説していきます。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

生活に支障をきたす難病の症状

難病の多くは、日常生活に何らかの制限や困難をもたらします。支障の程度は疾患や重症度によってさまざまですが、身体機能の低下、疲労感、痛み、認知機能の変化などが複合的に影響します。

感覚障害と疼痛

感覚障害は、しびれ、感覚鈍麻、異常感覚として現れ、生活の質を低下させます。多発性硬化症では、視覚障害、感覚異常、排尿障害などが出現する場合があります。末梢神経障害を伴う難病では、手足のしびれや痛みが持続し、細かい作業が困難になることがあります。感覚障害は外見からは分かりにくいため、周囲の理解を得にくいという課題もあります。 慢性疼痛は、難病患者さんの多くが経験する苦痛です。関節痛、筋肉痛、神経痛など痛みの種類はさまざまで、鎮痛薬だけでは十分にコントロールできない場合があります。線維筋痛症は、全身の広範囲にわたる痛みと圧痛点が特徴で、疲労感や睡眠障害も伴います。痛みのために活動が制限され、社会参加が困難になる患者さんも少なくありません。痛みの評価と適切な疼痛管理が、QOL維持に重要な役割を果たします。

内臓機能障害と生活制限

内臓機能の障害も、生活に大きな影響を及ぼします。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)では、頻回の下痢や腹痛により外出が制限される場合があります。トイレの心配から社会活動を控える患者さんも多く、心理的負担も大きくなります。活動期には入院治療が必要になり、就労や就学に支障をきたすことがあります。 腎機能障害が進行すると、透析療法が必要になる場合があります。血液透析では週3回、1回4時間程度の通院が必要となり、生活リズムが大きく制約されます。全身倦怠感や食事制限もあり、就労継続が困難になる場合があります。腎移植という選択肢もありますが、ドナー不足や免疫抑制療法の継続といった課題があります。

まとめ

難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。 症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。

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