予後不良でも納得のいく人生を! 「難病治療」の緩和ケアの新しい役割

予後不良とされる難病であっても、医療技術の進歩により延命や生活の質の向上が可能になってきました。緩和ケアの早期導入、多職種連携による包括的支援、アドバンス・ケア・プランニングなど、患者さんとご家族を支える仕組みが整備されています。本章では、QOL維持のための医療的介入と、医師・看護師・療法士・ソーシャルワーカーなど多職種によるチーム医療の実際について説明します。

監修医師:
五藤 良将(医師)
予後改善のための医療技術と支援体制
予後不良とされる難病であっても、医療技術の進歩により延命や生活の質の向上が可能になってきました。適切な医療的介入と多職種連携により、患者さんのQOL維持が図られています。
緩和ケアと終末期医療
予後不良な難病において、緩和ケアは不可欠な要素となります。緩和ケアとは、生命を脅かす疾患に直面している患者さんとご家族のQOLを改善するアプローチで、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に発見し対処します。難病の場合、診断初期から緩和ケアチームが介入することで、症状コントロールと心理的支援が効果的に行える場合があります。
終末期医療では、患者さんの意思を尊重した治療選択が重要です。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)として、将来の医療やケアについて事前に話し合い、意思決定を支援する取り組みが広がっています。人工呼吸器装着の希望、心肺蘇生の選択、療養場所の希望などを、患者さんが意思表示できるうちに確認しておくことが、本人とご家族の納得につながります。
多職種連携による包括的支援
難病患者さんの支援には、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、栄養士など多職種の連携が欠かせません。それぞれの専門性を活かしながら、患者さん中心のチーム医療を展開します。在宅療養では、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問介護などのサービスを組み合わせ、包括的な支援体制を構築します。
難病相談支援センターは、都道府県ごとに設置され、療養生活の相談、就労支援、ピアサポートなどを提供しています。患者会との連携により、同じ疾患を持つ方々との情報交換や心理的支援も受けられます。孤立を防ぎ、社会とのつながりを維持することが、患者さんのQOL向上に大きく寄与します。地域の医療機関や福祉サービスとの連携体制を整えることで、切れ目のない支援が可能となります。
まとめ
難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。
症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。