難病は単一の疾患群ではなく、神経系、免疫系、代謝系、循環器系など、さまざまな臓器や系統に影響を及ぼす多様な疾患の総称です。発症メカニズムも遺伝的要因、免疫異常、代謝障害、神経変性など多岐にわたります。本章では、病因や障害される臓器・系統による分類、進行様式による違い、そして臓器別に見た難病の種類について、具体的な疾患名を挙げながら詳しく説明していきます。
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
難病の医学的特徴と分類
難病は単一の疾患群ではなく、さまざまな臓器や系統に影響を及ぼす多様な疾患の総称です。発症メカニズムも遺伝的要因、免疫異常、代謝障害、神経変性など多岐にわたります。
難病は、病因や障害される臓器・系統によって分類されることが一般的です。神経系難病としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症などが代表的です。免疫系難病には、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病などが含まれます。代謝系難病では、ゴーシェ病、ファブリー病などのライソゾーム病、循環器系難病には肺動脈性肺高血圧症、血液系難病には再生不良性貧血や特発性血小板減少性紫斑病などがあります。これらの分類は、診療科の専門性や治療アプローチを考えるうえで重要な枠組みとなっています。
進行性と非進行性の難病
難病は、病態の進行様式によって進行性と非進行性(あるいは再発寛解型)に大別できます。進行性難病は、時間の経過とともに症状が悪化していくタイプで、神経変性疾患の多くがこれに該当します。筋萎縮性側索硬化症では運動神経が徐々に失われ、筋力低下が進行します。進行性核上性麻痺では、眼球運動障害や歩行障害が段階的に悪化します。これらの疾患では、進行の速度や症状の出現順序に個人差があり、予測が難しい場合もあります。
一方、非進行性または再発寛解型の難病は、症状の出現と軽快を繰り返すタイプです。多発性硬化症や全身性エリテマトーデスなどがこれに当たり、適切な治療により寛解期を長く維持できる場合があります。病型によって予後や生活設計が大きく異なるため、診断時には進行パターンを理解することが重要です。
臓器別に見る難病の種類
難病を臓器別に分類すると、それぞれの特徴が明確になります。神経・筋系では、運動機能や感覚機能の障害が中心となり、日常生活動作の低下が問題となります。消化器系難病では、炎症性腸疾患のように腹痛や下痢が持続し、栄養吸収障害を引き起こす疾患が多く見られます。
呼吸器系難病には、間質性肺炎や肺動脈性肺高血圧症があり、呼吸困難が主症状です。腎・泌尿器系では、ネフローゼ症候群や多発性嚢胞腎などがあり、腎機能の低下が進行すると透析が必要になる場合があります。血液系難病は、造血機能の障害により貧血や出血傾向を呈します。内分泌・代謝系では、ホルモン分泌異常や物質代謝の障害が全身症状を引き起こします。臓器横断的に症状が現れる疾患もあり、複数の診療科が連携して診療にあたることが少なくありません。
まとめ
難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。
症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。