医療費助成以外にも、難病患者さんが利用できる社会保障制度は多岐にわたります。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス、特別障害者手当などの経済的支援、税制優遇、就労支援、難病相談支援センターによる包括的な相談対応などがあります。本章では、これらの制度を総合的に活用することで生活の安定を図る方法について、具体的な利用手続きとともに詳しく説明していきます。
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
その他の社会保障制度と支援サービス
医療費助成以外にも、難病患者さんが利用できる社会保障制度は多岐にわたります。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス、介護保険サービス、各種手当、税制優遇などがあり、総合的に活用することで生活の安定が図れます。
障害者総合支援法では、身体障害者手帳を取得していなくても、指定難病患者さんは障害福祉サービスの対象となります。居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、短期入所(ショートステイ)、生活介護、就労支援などのサービスが利用できます。市町村の窓口で申請し、障害支援区分の認定を受けることで、必要なサービスが提供されます。利用できるサービスの内容や量は、障害支援区分や地域の資源によって異なります。
経済的支援と手当制度
重度の障害がある場合、特別障害者手当や障害児福祉手当が支給される場合があります。特別障害者手当は、20歳以上で著しく重度の障害により日常生活に常時特別の介護を要する方が対象で、月額29,590円(2025年4月時点)が支給されます。所得制限があり、施設入所中や3ヶ月以上入院している場合は対象外です。
医療費控除や障害者控除により、税負担が軽減されます。医療費が年間10万円を超えた場合、確定申告により所得税の還付を受けられます。障害者手帳を持っている場合、障害者控除(所得税27万円、住民税26万円)または特別障害者控除(所得税40万円、住民税30万円)が適用されます。これらの制度を組み合わせることで、経済的負担を軽減できる可能性があります。
就労支援と社会参加
難病患者さんの就労支援も重要な課題です。ハローワークには難病患者就職サポーターが配置され、就職相談や職場定着支援を行っています。障害者雇用促進法に基づく合理的配慮により、通院時間の確保、短時間勤務、作業環境の調整などが事業主に求められます。就労可能な難病患者さんは多く、適切な配慮により就労継続が可能となる場合があります。
難病相談支援センターでは、療養生活全般の相談に応じます。医療、福祉、就労、心理など多岐にわたる相談を受け付け、必要に応じて専門機関につなぎます。患者会の紹介や交流会の開催により、ピアサポートの機会も提供されます。患者さんが孤立せず、社会とのつながりを持ちながら生活できる環境づくりが進められています。地域によって利用できるサービスに差がある場合もあるため、居住地の支援体制を確認することが重要です。
まとめ
難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。
症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。