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「難病」と「指定難病」は何が違う? 法律で決まる定義と医療費助成の仕組み

 公開日:2025/11/27

難病という言葉は広く知られていますが、医学的・法律的には明確な定義が存在します。日本では「難病の患者に対する医療等に関する法律」により、発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期の療養を必要とするものと定められています。現在348疾患が指定難病として認定され、医療費助成や研究推進の対象となっています。本章では難病の法的位置づけと、指定難病制度の仕組みについて解説します。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

難病の定義と法律上の位置づけ

難病は、発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期の療養を必要とするものと定義されています。日本では「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)において明確に位置づけられ、厚生労働省が指定難病を選定しています。 難病という言葉は日常的に使われますが、医学的・法律的には明確な定義が存在します。難病法が制定された背景には、患者さんの経済的負担の軽減と、希少疾患の研究推進という二つの目的があります。指定難病に認定されるためには、患者数が一定数以下であること、診断基準が確立していること、重症度分類が明確であることなど、複数の要件を満たす必要があります。現在、指定難病は348疾患(2025年4月1日現在)にのぼり、神経・筋疾患、代謝系疾患、免疫系疾患など多岐にわたります。

指定難病の選定基準

指定難病として認定されるには、厚生労働省が定める6つの要件を満たす必要があります。まず、患者数が日本国内で一定の人数(概ね人口の0.1%程度)に達しないこと、つまり希少性が求められます。次に、原因が不明であること、効果的な治療方法が未確立であること、生活面で長期にわたる支障があること、診断に関する客観的な指標があること、そして患者数が把握できることが条件です。 指定難病となると、医療費助成の対象となるだけでなく、研究班が組織されて病態解明や治療法開発が進められます。患者さんにとっては、経済的支援を受けながら、将来的な治療法の確立に向けた研究に貢献できる仕組みといえます。ただし、指定難病に該当しない希少疾患も数多く存在し、すべての難病が助成対象となるわけではない点には留意が必要です。

難病と特定疾患の違い

「難病」と「特定疾患」という言葉は混同されやすいですが、厳密には異なる概念です。特定疾患は、かつて旧難病対策要綱で定められていた56疾患を指す言葉で、現在の指定難病制度の前身となるものでした。2015年の難病法施行により、特定疾患という枠組みは指定難病に統合され、対象疾患も大幅に拡大されました。 現在では、特定疾患という用語は行政上ほとんど使用されず、指定難病という呼称が一般的です。ただし、医療機関や患者会などでは、歴史的経緯から特定疾患という言葉が残っている場合もあります。患者さんが制度を利用する際には、指定難病という正式名称を用いることで、手続きがスムーズに進むでしょう。

まとめ

難病は、発病機構が不明で治療法が確立していない希少疾患の総称であり、指定難病として348疾患が認定されています。生命予後に影響を及ぼす可能性のある難病、生活に支障をきたす難病、先天性の難病など、その病態や影響は多様です。適切な診断と治療、リハビリテーション、福祉用具の活用により、生活の質を維持・向上させることができる場合があります。 症状や生活上の困難に気づいた際には、早めに専門医療機関を受診し、適切な支援につながることをおすすめします。難病相談支援センターや医療機関のソーシャルワーカーなど、専門家の支援を活用しながら、患者さんとご家族にとって納得のいく療養生活を送っていただければ幸いです。

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