「原因不明」の『危険な腹痛』とは? どこが痛む? 女性に多い疾患とは?【医師解説】

腹痛は日常生活において頻繁に経験する症状ですが、原因が多岐にわたるため診断が難しい場合もあります。腹部には消化器系、泌尿器系、生殖器系など多くの臓器が存在し、それぞれが腹痛の原因となり得ます。本章では機能性疾患から緊急性の高い疾患まで、原因不明の腹痛の背景にある主な疾患について解説します。痛みの部位や性質から原因を絞り込む方法を理解しましょう。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
原因不明の腹痛の特徴
腹痛は日常生活において頻繁に経験する症状の一つですが、原因が多岐にわたるため、診断が難しい場合もあります。急性の激しい腹痛は緊急性が高い疾患を示唆しますが、慢性的に続く軽度から中等度の腹痛も、機能性疾患や潜在的な病変のサインである可能性があります。
腹部には消化器系、泌尿器系、生殖器系など多くの臓器が存在し、それぞれが腹痛の原因となり得ます。また、腹部以外の疾患、たとえば心臓や肺の疾患、代謝性疾患なども腹痛として現れることがあります。痛みの部位、性質、持続時間、随伴症状などから、原因を絞り込んでいきます。
機能性疾患による腹痛
過敏性腸症候群は、明確な器質的異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感と排便異常が慢性的に続く疾患です。ストレスや不安、食事内容などによって症状が変動することが特徴で、下痢型、便秘型、混合型に分類されます。腸の運動機能や知覚過敏が関与していると考えられています。症状の強さや頻度には個人差があり、日常生活への影響の程度も異なります。
機能性ディスペプシアは、胃や十二指腸に潰瘍やがんなどの病変がないにもかかわらず、上腹部痛や胃もたれ、早期満腹感などの症状が続く状態です。胃酸分泌や胃の運動機能の異常、ストレスなどが関与しているとされています。食事の内容や量、タイミングによって症状が変化することがあります。
これらの機能性疾患は命に関わるものではありませんが、生活の質を大きく低下させることがあります。適切な生活習慣の改善や薬物療法、心理的アプローチによって症状の軽減が期待できます。
見逃してはいけない腹痛
急性虫垂炎は、初期の典型的な症状としてはみぞおちや臍周囲の痛みとして始まり、時間とともに右下腹部に移動する特徴的な経過をたどることが多いです。発熱や食欲不振、吐き気を伴い、進行すると虫垂が破裂して腹膜炎を起こす危険があります。症状の進行速度や重症度には個人差があります。
胆石症や胆嚢炎では、右上腹部から背中にかけての痛みが特徴です。脂肪分の多い食事の後に痛みが強くなることがあり、発熱や黄疸を伴う場合は胆管炎を合併している可能性があります。胆石の大きさや位置によって、症状の出現パターンは異なります。
女性の場合、卵巣嚢腫の茎捻転や卵巣出血、子宮外妊娠なども急性腹痛の原因となります。これらは緊急手術が必要になることもあるため、妊娠可能年齢の女性で急な腹痛が生じた場合は、産婦人科疾患も念頭に置く必要があります。月経周期や妊娠の可能性との関連を確認することが重要です。
まとめ
原因不明の足の痛み、発熱、腹痛、青あざ、体調不良など、身体が発するさまざまなサインには、それぞれに多様な原因が潜んでいる可能性があります。これらの症状は日常的によく経験するものですが、長期間続く場合や生活に支障をきたす場合は、専門的な評価が必要です。自己判断で対処するのではなく、適切なタイミングで医療機関を受診し、詳しい検査と診断を受けることが、根本的な解決への第一歩です。
原因不明の症状に対しては焦らず段階的に対応していくことが重要で、医療機関での適切な評価と治療、そして自身でのセルフケアを組み合わせることで、症状の改善と生活の質の向上を目指しましょう。