発熱は身体が何らかの異常に反応しているサインですが、原因が特定できないまま続くケースもあります。医学的には3週間以上続く38度以上の発熱で、1週間の入院精査でも原因が判明しないものを「不明熱」と定義されています。本章では原因不明の発熱の背景にある疾患や、発熱のパターンから読み取れる情報について解説します。適切な観察と記録が診断の重要な手がかりとなります。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
原因不明の発熱が続くとき
発熱は身体が何らかの異常に反応しているサインです。通常、感染症による発熱は数日で解熱しますが、原因が特定できないまま発熱が続くケースもあります。医学的には、3週間以上続く38度以上の発熱で、1週間の入院精査でも原因が判明しないものを「不明熱」と定義されています。
原因不明の発熱の背景には、感染症、膠原病、悪性腫瘍などさまざまな疾患が潜んでいる可能性があります。また、薬剤性の発熱や、まれな疾患が原因となることもあります。発熱以外の症状や、発熱のパターン、随伴症状を詳しく観察することが診断の手がかりになります。
感染症以外の発熱の原因
膠原病や自己免疫疾患では、身体の免疫システムが自分自身の組織を攻撃することで炎症が起こり、発熱が続きます。関節リウマチや全身性エリテマトーデス、血管炎症候群などが代表的な疾患です。これらでは発熱に加えて、関節痛、皮疹、口内炎、脱毛などの症状が見られることがあります。症状の組み合わせや程度には個人差があり、すべての症状が必ず現れるわけではありません。
悪性腫瘍も原因不明の発熱を引き起こすことがあります。特に悪性リンパ腫、白血病、腎臓がんなどでは、腫瘍そのものや腫瘍によって産生される物質が発熱の原因となることが知られています。体重減少や寝汗、リンパ節の腫れなどを伴うことが特徴です。ただし、これらの症状が必ずしも悪性腫瘍を意味するわけではなく、他の原因も考慮する必要があります。
薬剤性の発熱は、抗生物質や抗てんかん薬、抗がん剤など、さまざまな薬剤によって引き起こされる可能性があります。薬剤投与後数日から数週間で発熱が始まり、薬剤を中止すると速やかに解熱することが診断の根拠となります。薬剤との因果関係の判断には専門的な評価が必要です。
発熱のパターンと評価方法
発熱の時間帯や周期性も診断の重要な手がかりです。毎日決まった時間に発熱する場合、夕方から夜間にかけて高熱が出る場合、数日ごとに発熱を繰り返す場合など、パターンによって疑われる疾患が異なります。体温を記録し、その推移を医師に伝えることが診断に役立ちます。
発熱に伴う症状も注意深く観察する必要があります。頭痛、咳、腹痛、排尿時痛、皮疹、関節痛など、どのような症状がいつから出現したかを整理しておくことが重要です。また、海外渡航歴、動物との接触、最近始めた薬剤、職業上の曝露なども診断の手がかりになります。
血液検査では、白血球数や炎症反応を示すCRPの値、肝機能や腎機能、電解質などを調べます。さらに、血液培養検査や各種ウイルス抗体検査、腫瘍マーカー、自己抗体検査などが必要に応じて実施されます。画像検査としては、胸部レントゲン、CT、超音波検査などが行われることがあります。
まとめ
原因不明の足の痛み、発熱、腹痛、青あざ、体調不良など、身体が発するさまざまなサインには、それぞれに多様な原因が潜んでいる可能性があります。これらの症状は日常的によく経験するものですが、長期間続く場合や生活に支障をきたす場合は、専門的な評価が必要です。自己判断で対処するのではなく、適切なタイミングで医療機関を受診し、詳しい検査と診断を受けることが、根本的な解決への第一歩です。
原因不明の症状に対しては焦らず段階的に対応していくことが重要で、医療機関での適切な評価と治療、そして自身でのセルフケアを組み合わせることで、症状の改善と生活の質の向上を目指しましょう。