”毎日の減塩”が「脳梗塞」の予防につながる! どのくらいリスクが下がるのか医師が解説
公開日:2025/11/25

脳梗塞は日本人の死因の上位に位置し、後遺症によって生活の質を大きく損なう疾患です。塩分過剰摂取は、高血圧を介して脳梗塞のリスクを高める重要な危険因子の一つとなります。ここでは、大規模な疫学研究によって明らかになった高塩分食と脳血管疾患の関連性について解説します。特にラクナ梗塞と高血圧の関係や、減塩による脳卒中予防効果のエビデンスを紹介し、既に脳梗塞を経験した方の再発予防における塩分制限の重要性を説明します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
塩分摂取と脳梗塞のリスク
脳梗塞は日本人の死因の上位に位置し、後遺症によって生活の質を大きく損なう疾患です。塩分過剰摂取は、高血圧を介して脳梗塞のリスクを高める重要な危険因子の一つとなります。高塩分食と脳血管疾患の疫学的関連
大規模な疫学研究により、塩分摂取量と脳卒中(脳梗塞や脳出血を含む)の発症率には明確な相関関係があることが示されています。1日の塩分摂取量が推奨値を超えるごとに、脳卒中リスクが段階的に上昇することが報告されており、特に高血圧を合併している場合にはリスクがさらに増大する可能性があります。 日本人を対象とした研究では、塩分摂取量が多い地域ほど脳卒中の発症率が高いという地域差が確認されています。伝統的に塩蔵食品を多用する食文化を持つ地域では、減塩運動によって脳卒中死亡率が低下したという成功事例も報告されています。 脳梗塞にはいくつかのタイプがありますが、中でも脳の細い血管が詰まるラクナ梗塞は、高血圧との関連が特に強いとされています。長期的な高血圧状態は脳の細小動脈に負担をかけ、血管壁の変性を引き起こし、梗塞を起こしやすい状態を作り出す可能性があります。塩分制限による脳卒中予防効果
複数のメタアナリシスによって、塩分摂取量を減らすことで脳卒中の発症リスクが低下することが実証されています。メタアナリシスでは、1日5gの減塩により脳卒中リスクが約20〜25%低下するという試算も示されており、集団レベルでの公衆衛生対策としても減塩の重要性が認識されています。 減塩による脳卒中予防効果は、血圧低下を介したものが主ですが、それ以外にも血管内皮機能の改善や抗炎症作用などの直接的な効果も示唆されています。これらの複合的なメカニズムにより、減塩は脳血管の健康維持に寄与する可能性があります。 既に脳梗塞を経験した患者さん(二次予防の対象者)においても、塩分制限は再発予防の重要な柱の一つとなります。降圧薬や抗血小板薬などの薬物療法と併せて、減塩を含む生活習慣の改善を行うことで、再発リスクを大幅に低減できる場合があります。まとめ
塩分摂取と健康リスクの関係性について、摂取量の目安から、むくみ・高血圧・腎臓病・脳梗塞といった具体的な疾患との関連まで解説しました。日本人の平均塩分摂取量は目標値を大きく上回っており、これが循環器疾患や腎疾患の発症リスクを高める要因の一つとなっています。適切な減塩は、これらの疾患の予防と進行抑制に効果をもたらす可能性があります。日常生活での工夫を積み重ね、継続的に実践することが重要です。段階的な減塩、調味料の工夫、加工食品の選択、家庭血圧の測定など、できることから始めましょう。 症状や不安がある方、既に疾患をお持ちの方は、早めに専門医療機関を受診し、個別の状況に応じた指導を受けることをおすすめします。医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った塩分管理の方法を見つけることが、長期的な健康維持への第一歩となります。参考文献