「塩分過多で腎臓が悪くなる」理由をご存じですか? 知っておきたい身体の仕組み
公開日:2025/11/24

腎臓は体内の塩分バランスを調整する中心的な臓器であり、塩分の過剰摂取は腎臓に直接的な負担をかけます。一方、腎機能が低下すると塩分の排泄能力が落ち、さらなる健康リスクが生じる悪循環に陥る場合があります。ここでは、腎臓における塩分処理の仕組みから、慢性腎臓病との関連性まで解説します。早期からの塩分制限が腎機能の低下速度を緩やかにする可能性についても触れ、透析導入の時期を遅らせるための重要性を説明します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
塩分と腎臓病の相互関係
腎臓は体内の塩分バランスを調整する中心的な臓器であり、塩分の過剰摂取は腎臓に直接的な負担をかけます。一方、腎機能が低下すると塩分の排泄能力が落ち、さらなる健康リスクが生じる悪循環に陥る場合があります。腎臓における塩分処理の仕組み
健康な腎臓は、1日に約180リットルもの血液をろ過し、身体に必要な物質を再吸収しながら、不要な老廃物やナトリウムを尿として排泄します。この精密な調節機構により、体内のナトリウム濃度は厳密に維持されています。 塩分摂取量が増加すると、腎臓はより多くのナトリウムを排泄しなければならず、これが持続的な負担となります。過剰なナトリウムは糸球体(腎臓の血液ろ過装置)にかかる圧力を高め、糸球体の損傷を促進する可能性があります。また、高血圧を介して腎臓への血流が変化し、腎組織の線維化が進行することも明らかになっています。 慢性腎臓病(CKD)の患者さんでは、腎臓のナトリウム排泄能力が低下しているため、同じ量の塩分を摂取しても体内に蓄積しやすくなります。この結果、血圧上昇やむくみが生じやすくなり、さらに腎機能の低下が加速するという悪循環が形成される場合があります。腎機能低下と塩分制限の重要性
慢性腎臓病の進行を遅らせるためには、早期からの塩分制限が極めて重要です。日本腎臓学会のガイドラインでは、CKD患者さんに対して1日3〜6g未満の塩分制限を推奨しており、腎機能の程度や合併症の有無によって個別に調整されます。 塩分制限によって、腎臓への負担が軽減されるだけでなく、タンパク尿の減少や血圧の改善が期待できる場合があります。これらの効果は、透析導入の時期を遅らせることにつながる可能性があります。実際、厳格な減塩を実践したCKD患者さんでは、腎機能の低下速度が緩やかになることが報告されています。 ただし、過度な塩分制限は食欲低下や栄養不良を招く恐れがあるため、医師や管理栄養士の指導のもとで適切な目標値を設定することが大切です。また、腎機能が高度に低下している場合には、カリウムやリンなど他の栄養素の制限も必要となるため、総合的な栄養管理が求められます。まとめ
塩分摂取と健康リスクの関係性について、摂取量の目安から、むくみ・高血圧・腎臓病・脳梗塞といった具体的な疾患との関連まで解説しました。日本人の平均塩分摂取量は目標値を大きく上回っており、これが循環器疾患や腎疾患の発症リスクを高める要因の一つとなっています。適切な減塩は、これらの疾患の予防と進行抑制に効果をもたらす可能性があります。日常生活での工夫を積み重ね、継続的に実践することが重要です。段階的な減塩、調味料の工夫、加工食品の選択、家庭血圧の測定など、できることから始めましょう。 症状や不安がある方、既に疾患をお持ちの方は、早めに専門医療機関を受診し、個別の状況に応じた指導を受けることをおすすめします。医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った塩分管理の方法を見つけることが、長期的な健康維持への第一歩となります。参考文献