「1日6g塩分を減らすだけ」で薬並みに下がる? 減塩の驚きの効果とは【医師監修】
公開日:2025/11/21

高血圧は日本国内で約4,300万人が該当すると推定される国民病であり、塩分摂取との関連性は極めて強固です。血圧管理において塩分制限は基本的かつ重要な介入手段の一つとなります。ここでは、塩分が血圧を上昇させる複合的なメカニズムについて解説します。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系への影響や、個人差を生む「食塩感受性」についても触れ、減塩による降圧効果のエビデンスを紹介します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
プロフィールをもっと見る
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
塩分摂取と高血圧の密接な関係
高血圧は日本国内で約4,300万人が該当すると推定される国民病であり、塩分摂取との関連性は極めて強固です。血圧管理において塩分制限は基本的かつ重要な介入手段の一つとなります。塩分が血圧を上昇させるメカニズム
塩分摂取によって血圧が上昇する主要な経路は、前述した血液量の増加です。ナトリウムが体内に増えると、浸透圧を保つために水分が血管内に引き込まれ、循環血液量が増加します。心臓はより多くの血液を送り出す必要が生じ、血管壁にかかる圧力が高まります。 さらに、ナトリウムは血管平滑筋の収縮を促進し、血管の抵抗を増大させます。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)と呼ばれるホルモン系も塩分摂取によって影響を受け、血圧調節機構全体が乱れていく可能性があります。このような複合的なメカニズムにより、慢性的な高塩分摂取は持続的な血圧上昇をもたらす場合があります。 個人差も大きく、塩分摂取に対する血圧の反応性は「食塩感受性」と呼ばれます。食塩感受性が高い方では、同じ量の塩分を摂取しても血圧上昇が顕著になります。高齢者、肥満者、腎機能低下者、家族歴のある方などは食塩感受性が高い傾向があるとされています。減塩による降圧効果とそのエビデンス
多数の臨床試験によって、塩分摂取量を減らすことで血圧が低下することが実証されています。メタアナリシスの結果では、1日の塩分摂取量を約6g減らすことで、収縮期血圧が5〜6mmHg、拡張期血圧が2〜3mmHg低下することが示されています。高血圧患者さんでは降圧効果がより大きく現れる傾向があります。 この降圧効果は降圧薬1剤に相当する効果があるとされ、薬物療法と組み合わせることでより良好な血圧コントロールが可能となる場合があります。また、減塩は副作用がなく、費用もかからない介入方法であるため、多くの高血圧患者さんに推奨される基本的な対策です。 重要なのは、減塩による降圧効果は数週間から数ヶ月の継続的な実践によって現れるということです。一時的な塩分制限では十分な効果が得られないため、長期的な生活習慣として定着させることが求められます。家族全員で取り組むことで、継続しやすくなるでしょう。まとめ
塩分摂取と健康リスクの関係性について、摂取量の目安から、むくみ・高血圧・腎臓病・脳梗塞といった具体的な疾患との関連まで解説しました。日本人の平均塩分摂取量は目標値を大きく上回っており、これが循環器疾患や腎疾患の発症リスクを高める要因の一つとなっています。適切な減塩は、これらの疾患の予防と進行抑制に効果をもたらす可能性があります。日常生活での工夫を積み重ね、継続的に実践することが重要です。段階的な減塩、調味料の工夫、加工食品の選択、家庭血圧の測定など、できることから始めましょう。 症状や不安がある方、既に疾患をお持ちの方は、早めに専門医療機関を受診し、個別の状況に応じた指導を受けることをおすすめします。医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った塩分管理の方法を見つけることが、長期的な健康維持への第一歩となります。参考文献