日本人の「塩分摂取量」は“基準超え”が当たり前? 毎日の食生活に隠れているリスクとは
公開日:2025/11/16

塩分摂取量の適正水準を理解することは、健康管理の第一歩となります。国内外のガイドラインでは明確な目標値が設定されていますが、実際の摂取状況とは大きな乖離があるのが現実です。ここでは、厚生労働省やWHOが定める推奨量と、日本人の実際の摂取状況について詳しく解説します。日常的な食生活の中で蓄積される過剰摂取が、長期的にどのような健康リスクにつながるのかを知ることで、適切な目標設定が可能になります。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
塩分摂取量の基準と現状
塩分摂取量の適正水準を理解することは、健康管理の第一歩となります。国内外のガイドラインでは明確な目標値が設定されていますが、実際の摂取状況とは大きな乖離があるのが現実です。日本人における塩分摂取の推奨量
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、成人男性の1日あたりの塩分摂取目標量は7.5g未満、成人女性は6.5g未満とされています。 世界保健機関(WHO)はさらに厳格な基準を設けており、すべての成人に対して1日5g未満という目標を掲げています。この差は、各国の食文化や疾病構造を考慮した結果であり、日本人の現状から段階的に目標に近づけるという実務的な配慮も含まれています。 高血圧患者さんや慢性腎臓病を抱える方に対しては、より厳しい制限が推奨されます。日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧患者さんの塩分摂取目標を1日6g未満としており、腎機能が低下している場合にはさらに個別の調整が必要です。こうした目標値は疫学研究や臨床試験の積み重ねによって導き出されたもので、循環器疾患や腎疾患の発症リスクを抑えるための重要な指標となっています。 年齢や身体活動量によっても適切な摂取量は変動する可能性がありますが、基本的には成人であれば上記の目標値を意識することが望ましいでしょう。妊娠中や授乳期の女性についても、特別な制限がない限りは通常の成人女性と同様の基準が適用されます。実際の摂取量と目標値の乖離
国民健康・栄養調査の結果を見ると、日本人の平均塩分摂取量は目標値を大幅に上回っています。令和元年の調査では、成人男性で平均10.9g、成人女性で9.3gという数値が報告されており、目標値との差は男性で約3.4g、女性で約2.8gにも達しています。この差は日常的な食生活の中で蓄積されるもので、長期的には健康リスクの増大につながる可能性があります。 地域差も顕著であり、東北地方や北陸地方など伝統的に漬物や味噌を多用する食文化を持つ地域では、摂取量がさらに高くなる傾向が見られます。一方で、都市部では外食や中食(惣菜など)の利用が増えており、これらの食品には予想以上の塩分が含まれていることが多いため、別の形での過剰摂取が問題となっています。 若年層では塩分摂取に対する意識が比較的低く、ファストフードやインスタント食品の頻繁な利用が摂取量を押し上げる要因となっています。高齢者は漬物や干物など伝統的な保存食を好む傾向があり、こちらも高塩分摂取のリスク要因です。このように、年齢層や生活スタイルによって塩分過剰摂取の背景は異なりますが、いずれも意識的な改善が求められる状況にあります。まとめ
塩分摂取と健康リスクの関係性について、摂取量の目安から、むくみ・高血圧・腎臓病・脳梗塞といった具体的な疾患との関連まで解説しました。日本人の平均塩分摂取量は目標値を大きく上回っており、これが循環器疾患や腎疾患の発症リスクを高める要因の一つとなっています。適切な減塩は、これらの疾患の予防と進行抑制に効果をもたらす可能性があります。日常生活での工夫を積み重ね、継続的に実践することが重要です。段階的な減塩、調味料の工夫、加工食品の選択、家庭血圧の測定など、できることから始めましょう。 症状や不安がある方、既に疾患をお持ちの方は、早めに専門医療機関を受診し、個別の状況に応じた指導を受けることをおすすめします。医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った塩分管理の方法を見つけることが、長期的な健康維持への第一歩となります。参考文献