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「運動習慣」があると「フレイル」を予防できるのはどうして?【医師監修】

 公開日:2025/11/24
運動習慣とフレイル─高齢期の虚弱予防と身体機能の維持

高齢者の健康維持には、運動習慣が最も効果的な対策の一つです。筋力の低下や活動量の減少を防ぎ、転倒や寝たきりのリスクを減らします。さらに、運動は認知機能や精神面にも良い影響を与え、社会的なつながりを保つ助けにもなります。フレイル予防の要点を見ていきましょう。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

運動習慣とフレイル─高齢期の虚弱予防と身体機能の維持

フレイルは、加齢に伴う身体的・精神的・社会的な活力の低下した状態であり、要介護状態の前段階として位置づけられます。運動習慣は、フレイルの進行を防ぎ、健康寿命を延ばすための効果的な介入手段とされています。

フレイルと運動習慣の関連性

フレイルは、筋力低下、疲労感、活動量の減少、歩行速度の低下、体重減少といった要素が重なることで進行します。特に、筋肉量と筋力の減少(サルコペニア)は、フレイルの中核的な要素であり、転倒や骨折のリスクを高めます。運動習慣がない高齢者は、活動量の低下がさらなる筋力低下を招く悪循環に陥りやすくなります。

運動習慣を持つ高齢者は、筋肉量の減少が緩やかであり、身体機能が維持されやすいことが多くの研究で示されています。また、運動は食欲を適正化し、栄養状態の改善にも寄与します。社会参加を伴う運動活動(グループでのウォーキングや体操など)は、精神的な活力と社会的つながりを保つ効果もあり、フレイルの予防に多面的に作用します。

身体機能と生活の質の向上

運動習慣は、高齢者の日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)の維持に直結します。歩行能力、バランス能力、柔軟性といった身体機能が向上することで、買い物、家事、外出などの活動が自立して行えるようになります。特に、バランストレーニングを含む運動プログラムは、転倒予防に高い効果を示すとされています。

運動習慣は、骨密度の維持にも寄与し、骨折リスクを低減する可能性があります。高齢者において骨折は、寝たきりや要介護状態の主要な原因の一つであるため、骨と筋肉を同時に強化する運動は重要です。また、運動によって脳の血流が改善し、認知機能の低下が抑えられることも報告されています。運動習慣を持つ高齢者は、生活の質が高く、自立した生活を長く続けられる傾向にあります。ただし、効果の現れ方には個人差があり、年齢や健康状態によっても異なります。

まとめ

運動習慣は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、フレイルといった幅広い健康課題に対して、予防と改善の両面で効果を発揮する可能性があります。適切な運動は、身体の生理機能を向上させ、疾病リスクを低減し、生活の質を高める可能性があります。ただし、効果の現れ方には個人差があり、年齢や健康状態、遺伝的要因によっても異なります。

年齢や健康状態に応じた運動プログラムを、医師や専門家と相談しながら開始し、無理なく継続することが重要です。運動習慣の確立は、健康寿命の延伸と自立した生活の維持につながる、効果的な手段の一つといえます。運動を始める前には、医師による総合的な評価を受け、安全に実施できる運動の種類や強度を確認することが推奨されます。

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