「高血圧」になるとどんな「運動療法」が推奨されるかご存知ですか?【医師監修】

高血圧の改善には、継続できる運動プログラムが欠かせません。ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を中心に、軽い筋力トレーニングを組み合わせることで、血圧の安定と体力の維持が期待できます。安全に行うための運動強度や頻度、注意すべきポイントを紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
高血圧患者さんのための運動プログラム
高血圧の管理において、運動療法は生活習慣の改善の中心的な要素です。適切な運動プログラムを実践することで、降圧効果だけでなく、全身の健康状態の向上が期待できます。
推奨される運動の種類と実施方法
高血圧患者さんには、中強度の有酸素運動が第一選択となります。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが推奨され、週に5〜7日、1回30分以上を目標とします。運動強度は、最大心拍数の50〜70%程度、または「ややきつい」と感じる程度が適切です。運動中の会話が可能な程度の強度を維持することで、安全性と効果のバランスが取れます。
筋力トレーニングも、週2〜3回の頻度で実施することが推奨されています。ただし、高血圧患者さんの場合、重量挙げのような高強度の等尺性運動(アイソメトリック運動)は、一時的に血圧を急上昇させる可能性があるため、低〜中強度のダイナミックな筋力トレーニング(スクワット、腕立て伏せなど)が適しています。呼吸を止めずに、動作を滑らかに行うことが重要です。
運動時の注意点とリスク管理
高血圧患者さんが運動を開始する際には、まず医師による評価が必要です。血圧が著しく高い状態(収縮期血圧180mmHg以上、または拡張期血圧110mmHg以上)では、まず薬物療法で血圧を下げてから運動を開始します。また、心疾患や腎機能障害などの合併症がある場合には、運動の種類や強度を慎重に設定します。
運動前後には、ウォーミングアップとクールダウンを必ず行い、急激な血圧の変動を避けます。運動中に胸痛、息切れ、めまい、動悸などの症状が現れた場合は、直ちに運動を中止し、医療機関を受診します。夏季の高温多湿な環境や、冬季の早朝の寒冷時には、血圧の変動が大きくなるため、運動の時間帯や場所を調整することも大切です。運動習慣を安全に継続するためには、定期的な血圧測定と、医師との情報共有が欠かせません。
まとめ
運動習慣は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、フレイルといった幅広い健康課題に対して、予防と改善の両面で効果を発揮する可能性があります。適切な運動は、身体の生理機能を向上させ、疾病リスクを低減し、生活の質を高める可能性があります。ただし、効果の現れ方には個人差があり、年齢や健康状態、遺伝的要因によっても異なります。
年齢や健康状態に応じた運動プログラムを、医師や専門家と相談しながら開始し、無理なく継続することが重要です。運動習慣の確立は、健康寿命の延伸と自立した生活の維持につながる、効果的な手段の一つといえます。運動を始める前には、医師による総合的な評価を受け、安全に実施できる運動の種類や強度を確認することが推奨されます。
参考文献