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「高血圧」の方が「運動習慣」を持つとどんな効果があるかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/11/21
運動習慣と高血圧─降圧効果と心血管リスクの軽減

高血圧は放置すると心疾患や脳卒中を引き起こすリスクがありますが、運動習慣によって自然に血圧を下げることが可能です。運動は血管を柔らかくし、心臓への負担を軽減します。また、体重や脂質バランスの改善にもつながります。ここでは、運動による降圧の仕組みを詳しく解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

運動習慣と高血圧─降圧効果と心血管リスクの軽減

高血圧は、動脈硬化や心疾患、脳卒中のリスクを高める重大な危険因子です。運動習慣は、薬物療法を補完する非薬物療法の中核として、降圧効果と心血管保護作用が実証されています。

運動による血圧低下のメカニズム

運動習慣が血圧を低下させる仕組みには、複数の経路が関与しています。まず、運動によって血管内皮から一酸化窒素(NO)が産生され、血管が拡張しやすくなります。血管の柔軟性が向上することで、末梢血管抵抗が低下し、血圧が下がります。また、運動は交感神経系の活動を調整し、安静時の心拍数と血圧を低下させます。

さらに、運動習慣は体重減少と内臓脂肪の減少を促し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性が抑制されることで、体液量の調整が適正化されます。これらの効果は、運動直後の一時的な降圧だけでなく、長期的な血圧コントロールの改善につながります。複数の研究によると、定期的な有酸素運動によって、平均的には収縮期血圧が5〜10mmHg、拡張期血圧が3〜5mmHg程度低下すると報告されていますが、効果の大きさには個人差があります。

運動習慣がもたらす心血管保護効果

高血圧患者さんが運動習慣を持つことで、単に血圧が下がるだけでなく、心臓や血管の構造的・機能的な改善も得られます。左室肥大(心臓の壁が厚くなる状態)の進行が抑制され、心臓の拡張機能が向上します。また、動脈の硬化度が改善し、血管の弾力性が回復することで、脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)が適正化されます。

運動は、血小板の凝集能を低下させ、血栓形成のリスクを減少させる効果もあります。これにより、心筋梗塞や脳卒中といった致命的な心血管イベントの発症率が低下する可能性があります。高血圧患者さんにおける運動習慣の継続は、総死亡率と心血管死亡率の両方を有意に減少させることが、大規模なコホート研究で確認されています。運動は、降圧薬の効果を高める補完的な役割も果たし、薬の種類や用量を減らせる可能性もあります。ただし、薬剤の調整は必ず医師と相談しながら行う必要があります。

まとめ

運動習慣は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、フレイルといった幅広い健康課題に対して、予防と改善の両面で効果を発揮する可能性があります。適切な運動は、身体の生理機能を向上させ、疾病リスクを低減し、生活の質を高める可能性があります。ただし、効果の現れ方には個人差があり、年齢や健康状態、遺伝的要因によっても異なります。

年齢や健康状態に応じた運動プログラムを、医師や専門家と相談しながら開始し、無理なく継続することが重要です。運動習慣の確立は、健康寿命の延伸と自立した生活の維持につながる、効果的な手段の一つといえます。運動を始める前には、医師による総合的な評価を受け、安全に実施できる運動の種類や強度を確認することが推奨されます。

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