目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 「運動習慣」が「2型糖尿病」の予防に効果的なのはどうして?【医師監修】

「運動習慣」が「2型糖尿病」の予防に効果的なのはどうして?【医師監修】

 公開日:2025/11/23
運動習慣と2型糖尿病─血糖コントロールと合併症予防

運動は、2型糖尿病の治療や予防に欠かせない要素です。筋肉がエネルギーを消費することで血糖値が下がり、インスリン抵抗性が改善されます。さらに、運動習慣の継続は合併症のリスク低減にもつながります。ここでは、運動が血糖コントロールにどのように作用するかを具体的に解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

運動習慣と2型糖尿病─血糖コントロールと合併症予防

2型糖尿病は、インスリン分泌の低下とインスリン抵抗性によって高血糖が持続する疾患です。運動習慣は、血糖コントロールの改善と合併症の予防において、薬物療法と並ぶ重要な治療手段となっています。

運動によるインスリン感受性の向上

運動中にはAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)が活性化され、エネルギー消費が増加し、血糖値の改善や脂肪燃焼が促進されます。運動によって筋肉が収縮し、GLUT4(グルコーストランスポーター4(Glucose Transporter Type 4)が細胞内から細胞膜へ移動してグルコースの取り込みが促進されます。 これらのプロセスは、インスリンとは独立して起こるため、インスリン抵抗性がある場合でも血糖値の改善が期待できます。

習慣的に運動を行うことで、筋肉量が増加し、糖の貯蔵庫としての機能が強化されます。また、脂肪組織から分泌される炎症性物質が減少し、インスリンのシグナル伝達が正常化します。これらの効果により、HbA1c(過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する指標)が0.5〜1.0%程度低下することが複数の研究で示されており、薬物療法の効果を補完する役割を果たします。

合併症リスクの低減効果

糖尿病の合併症には、網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害と、心筋梗塞や脳卒中などの大血管障害があります。運動習慣は、血糖コントロールの改善を通じて、これらの合併症の発症リスクを低減する可能性があります。特に、心血管疾患のリスクは、運動によって血圧や脂質プロファイルが改善されることで大きく減少すると考えられています。

運動は末梢神経の血流を改善し、神経障害の進行を遅らせる可能性も指摘されています。また、腎機能の保持にも寄与し、糖尿病性腎症の進行を抑える効果が期待されます。ただし、既に進行した合併症がある場合には、運動の種類や強度に制限が必要なこともあります。たとえば、増殖網膜症がある方は、激しい運動が眼底出血を引き起こすリスクがあるため、低強度の運動が推奨されます。合併症の有無や程度に応じて、医師と相談しながら適切な運動プログラムを組み立てることが重要です。

まとめ

運動習慣は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、フレイルといった幅広い健康課題に対して、予防と改善の両面で効果を発揮する可能性があります。適切な運動は、身体の生理機能を向上させ、疾病リスクを低減し、生活の質を高める可能性があります。ただし、効果の現れ方には個人差があり、年齢や健康状態、遺伝的要因によっても異なります。

年齢や健康状態に応じた運動プログラムを、医師や専門家と相談しながら開始し、無理なく継続することが重要です。運動習慣の確立は、健康寿命の延伸と自立した生活の維持につながる、効果的な手段の一つといえます。運動を始める前には、医師による総合的な評価を受け、安全に実施できる運動の種類や強度を確認することが推奨されます。

この記事の監修医師

注目記事