「悪性リンパ腫の治療法」は主に何をするのかご存じですか?【医師監修】

悪性リンパ腫の治療は、病型とステージ、患者さんの全身状態に応じて選択されます。化学療法、放射線治療、造血幹細胞移植が主な治療法となり、近年では分子標的薬や免疫療法の進歩により治療選択肢が広がっています。ここでは、各治療法の基本的な考え方と代表的なレジメン、さらに革新的な治療法について詳しく解説していきます。

監修医師:
明星 智洋(江戸川病院)
現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
悪性リンパ腫の主要な治療法
悪性リンパ腫の治療は、病型とステージ、患者さんの全身状態に応じて選択されます。主な治療法には化学療法、放射線治療、造血幹細胞移植があります。
化学療法の基本と代表的なレジメン
化学療法は、悪性リンパ腫治療の中心的な役割を果たしています。リンパ腫細胞は化学療法に対して比較的感受性が高く、多くの症例で高い治療効果が期待できます。化学療法では、作用機序の異なる複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法が標準となっています。
化学療法の副作用には、吐き気、脱毛、白血球減少、貧血、血小板減少、感染症、末梢神経障害などがあります。これらの副作用に対しては、制吐剤、抗生物質、造血因子製剤、輸血などを用いた支持療法が実施されます。副作用の種類や程度は、使用する薬剤や投与量、患者さんの状態によって異なります。
分子標的薬と免疫療法の進歩
近年、悪性リンパ腫の治療において分子標的薬や免疫療法が大きな進歩を遂げています。分子標的薬は、がん細胞に特異的な分子を標的とする薬剤で、従来の化学療法に比べて正常細胞への影響が少ないという利点があります。リツキシマブは、B細胞表面に発現するCD20という分子を標的とする抗体薬で、B細胞性リンパ腫の治療に革命をもたらしました。
免疫チェックポイント阻害薬は、患者さん自身の免疫系ががん細胞を攻撃する能力を回復させる薬剤です。ニボルマブやペムブロリズマブなどの抗PD-1抗体は、古典的ホジキンリンパ腫や一部の非ホジキンリンパ腫に対して承認されています。さらに、CAR-T細胞療法という革新的な治療法も実用化されています。これは、患者さん自身のT細胞を体外で遺伝子改変し、リンパ腫細胞を特異的に攻撃できるようにしてから体内に戻す治療法です。再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫などに対して、高い効果を示すことが報告されています。
まとめ
悪性リンパ腫は、早期発見と適切な治療により、長期的な寛解(症状が落ち着いた状態)が得られる方も増えています。初期症状を見逃さず、専門医による正確な診断と病期評価を受けることが重要です。治療後は晩期合併症に注意しながら、定期的なフォローアップと健康的な生活習慣により、質の高い人生を送ることが可能です。気になる症状がある場合には、早めに血液内科や腫瘍内科を受診することが大切です。