「悪性リンパ腫」はどのようにして診断されるのか?検査法を解説!【医師監修】

正確な病期診断を行うためには、多角的な検査と評価が必要です。画像検査や骨髄検査、血液検査など、各種検査を組み合わせることで病変の広がりと全身状態を正確に把握します。ここでは、病期診断に用いられる主要な検査方法と、それぞれの検査がどのような情報を提供するのかについて詳しく見ていきます。

監修医師:
明星 智洋(江戸川病院)
現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
病期診断のための検査と評価方法
正確な病期診断には、多角的な検査と評価が必要です。各種検査を組み合わせることで、病変の広がりと全身状態を把握します。
画像検査による病変の評価
悪性リンパ腫の病期診断において、画像検査は欠かせません。CTスキャンは、全身のリンパ節と臓器を評価する標準的な検査です。造影CTを用いることで、リンパ節腫大の程度、臓器への浸潤、血管との位置関係などを詳細に把握できます。一般的には、頸部から骨盤まで(ときには下肢まで)の全身CT検査が実施されます。
近年では、PET-CT(陽電子放出断層撮影とCTの融合画像)が病期診断や治療効果判定に広く用いられています。PET-CTは、ブドウ糖に似た放射性薬剤(FDG)を体内に投与し、がん細胞による糖の取り込みを画像化する検査です。代謝が活発ながん細胞は正常組織よりも多くのFDGを取り込むため、病変部位が明瞭に描出されます。PET-CTは、全身の病変の広がりを一度に把握でき、CTだけではわかりにくい複数部位の病変や治療後の残存病変の活動性を評価する際にも有用です。
MRI検査は、中枢神経系への浸潤が疑われる場合に実施されます。脳や脊髄のリンパ腫は、造影MRIによって詳細に評価できます。また、骨盤部や後腹膜の病変については、CTが標準的に用いられます。
骨髄検査と生化学的評価
骨髄への浸潤の有無を確認するため、骨髄穿刺や骨髄生検が実施されます。骨髄にリンパ腫細胞が認められる場合、病期はIV期となります。骨髄検査は通常、腸骨(骨盤の骨)から針を刺して骨髄液と骨髄組織を採取します。局所麻酔下で行われる検査ですが、多少の痛みを伴うことがあります。
採取された骨髄は、顕微鏡による形態学的評価に加えて、フローサイトメトリーや染色体検査、遺伝子検査などの詳細な解析が行われます。これにより、骨髄浸潤の有無や一部の予後因子を確認することが可能です。リンパ腫の病型診断は基本的にリンパ節生検で行われ、骨髄検査で病型を判断することは通常ありません。ただし、血管内リンパ腫のようなまれな例では、骨髄の評価が診断の参考になる場合があります。
血液検査では、血算(全血球計算)、肝機能、腎機能、LDH、sIL-2R、β2-ミクログロブリンなどが測定されます。LDHの上昇は腫瘍量の指標となり、予後因子でもあります。sIL-2Rはリンパ腫の活動性を反映するマーカーであり、治療効果のモニタリングにも用いられます。また、B型肝炎やC型肝炎、HIVなどの感染症スクリーニングも重要です。これらのウイルス感染が存在する場合、化学療法によってウイルスが再活性化するリスクがあるため、適切な対策が必要となります。
まとめ
悪性リンパ腫は、早期発見と適切な治療により、長期的な寛解(症状が落ち着いた状態)が得られる方も増えています。初期症状を見逃さず、専門医による正確な診断と病期評価を受けることが重要です。治療後は晩期合併症に注意しながら、定期的なフォローアップと健康的な生活習慣により、質の高い人生を送ることが可能です。気になる症状がある場合には、早めに血液内科や腫瘍内科を受診することが大切です。