「悪性リンパ腫は膵臓周辺にも発生」する?症状と特徴を解説!

悪性リンパ腫はリンパ節以外の臓器にも発生することがあり、膵臓周辺に生じるケースもあります。膵臓に関連した悪性リンパ腫は比較的まれですが、膵臓がんと症状が類似しているため正確な診断が求められます。ここでは、膵臓原発リンパ腫と後腹膜リンパ節腫大による膵臓周囲の病変について、それぞれの症状や診断方法を詳しく見ていきます。

監修医師:
明星 智洋(江戸川病院)
現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
膵臓周辺に発生する悪性リンパ腫の特徴
悪性リンパ腫はリンパ節に多くみられる疾患ですが、まれにリンパ節以外の臓器に発生することもあります。発生部位によって症状が変わるため、原因のはっきりしない腫瘤や臓器の異常が指摘された場合には、専門的な評価が行われます。
膵臓原発リンパ腫の症状と診断
膵臓に生じる悪性リンパ腫は全体の中でも極めてまれですが、膵臓がんと症状が似ていることがあるため、正確な鑑別が重要です。症状は、上腹部の痛みや張り感、食欲不振、吐き気など、一般的な消化器症状が中心です。腫瘤が大きくなると、膵管や胆管が押されて黄疸がみられることもあります。
診断には、CT検査やMRI検査、超音波内視鏡検査などの画像検査が用いられます。膵臓原発リンパ腫は、画像上では境界比較的明瞭な腫瘤として描出され、膵臓がんと比べて造影効果が比較的均一であることが特徴です。ただし、画像所見だけでは確定診断が困難な場合も多く、超音波内視鏡下穿刺吸引法による組織採取が必要となることがあります。
後腹膜リンパ節腫大と膵臓周囲の病変
膵臓原発リンパ腫よりも頻度が高いのは、後腹膜リンパ節に発生した悪性リンパ腫が膵臓周囲に進展するケースです。この場合、膵臓そのものではなく、膵臓周囲のリンパ節が腫大し、膵臓を圧迫したり包み込んだりする形態をとります。症状は膵臓原発リンパ腫と類似しており、腹痛や背部痛、消化不良などが現れます。
後腹膜リンパ節腫大は、CT検査で比較的容易に発見できます。正常では小さく目立たない後腹膜リンパ節が、1cm以上に腫大し、複数個が融合して大きな腫瘤を形成することがあります。この腫瘤が膵臓や十二指腸、大血管を圧迫することで、さまざまな症状が引き起こされます。腹部大動脈周囲や上腸間膜動脈周囲のリンパ節腫大が特徴的です。
診断確定のためには、CTガイド下生検や外科的生検が必要となる場合があります。ただし、後腹膜は重要な血管や臓器が密集しているため、生検には一定のリスクが伴います。そのため、他部位(鼠径部リンパ節など)にアクセスしやすい病変がある場合には、そちらから組織を採取することが優先されます。
まとめ
悪性リンパ腫は、早期発見と適切な治療により、長期的な寛解(症状が落ち着いた状態)が得られる方も増えています。初期症状を見逃さず、専門医による正確な診断と病期評価を受けることが重要です。治療後は晩期合併症に注意しながら、定期的なフォローアップと健康的な生活習慣により、質の高い人生を送ることが可能です。気になる症状がある場合には、早めに血液内科や腫瘍内科を受診することが大切です。