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「前立腺肥大症」の手術は『尿道から内視鏡を入れ、肥大組織を切除する』って本当?

 公開日:2025/11/16
「前立腺肥大症」の手術は『尿道から内視鏡を入れ、肥大組織を切除する』って本当?

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、重度の症状がある場合、合併症を伴う場合には手術療法が検討されます。経尿道的前立腺切除術が標準的な方法ですが、近年ではレーザー前立腺手術など低侵襲な治療法も普及しています。手術方法の選択は前立腺のサイズや患者さんの年齢、併存疾患などを総合的に考慮して決定され、それぞれの治療法に特徴があります。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

手術療法の種類と適応

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、重度の症状がある場合、合併症を伴う場合には手術療法が検討されます。手術の適応となる具体的な状況としては、繰り返す尿閉、腎機能障害、膀胱結石、持続的な血尿、大量の残尿などが挙げられます。

標準的な手術方法と新しい低侵襲治療

経尿道的前立腺切除術は前立腺肥大症に対する標準的な手術方法です。尿道から内視鏡を挿入し、電気メスで肥大した前立腺組織を切除します。入院期間は通常3日から7日程度で、手術時間は前立腺のサイズにより1時間から2時間程度です。症状改善効果は高く、多くの患者さんで排尿状態の大幅な改善が得られます。

レーザー前立腺手術は近年普及が進んでいる治療法です。ホルミウムレーザーやツリウムレーザーを用いて前立腺組織を蒸散または切除します。出血が少なく、抗血栓薬を服用している方でも比較的安全に実施できる利点があります。入院期間も短縮される傾向にあり、身体への負担が軽減されています。

経尿道的前立腺核出術は、前立腺が非常に大きい場合に適した方法です。肥大した前立腺を尿道から内視鏡で核出し、細かく砕いて摘出します。従来は開腹手術が必要だった大きな前立腺に対しても、低侵襲に治療できるようになりました。

経尿道的前立腺蒸散術は、レーザーや電気エネルギーにより前立腺組織を蒸散させる方法です。出血リスクが非常に低く、日帰りまたは短期入院で実施できることが特徴です。ただし、大きな前立腺には向かない場合があります。

手術方法の選択は、前立腺のサイズ、患者さんの年齢、併存疾患、服用中の薬剤などを総合的に考慮して決定されます。抗血栓薬を服用している方ではレーザー手術が優先されることがあります。

新しい低侵襲治療の選択肢

近年、より低侵襲な治療法が開発されています。経尿道的高温度治療は、マイクロ波や高周波を用いて前立腺組織を加熱し、組織の変性を促す方法です。外来または短期入院で実施でき、性機能への影響が少ないとされていますが、効果は従来の手術に比べてやや劣る場合があります。

尿道ステント留置は、尿道内に金属製またはシリコン製のステントを留置し、尿道の開存性を保つ方法です。手術リスクが高い高齢者や重篤な併存疾患のある方に対する選択肢となります。ただし、長期的な有効性や合併症のリスクがあり、慎重な適応判断が必要です。

前立腺動脈塞栓術は、カテーテルを用いて前立腺に栄養を送る動脈を塞栓し、前立腺を縮小させる方法です。全身麻酔が不要で身体への負担が少ないですが、まだ長期的な治療成績のデータが蓄積段階にあります。手術リスクが高い方や、従来の治療で効果が不十分だった方への新たな選択肢として期待されています。

まとめ

前立腺肥大症は加齢に伴い多くの男性が経験する疾患ですが、適切な知識と早期の対処により、生活の質を維持することが可能です。排尿症状や性機能への影響は、個人の生活に深刻な影響を及ぼす可能性がありますが、現代医療では薬物療法から低侵襲手術まで多様な選択肢が用意されています。症状に気づいた段階で泌尿器科を受診し、専門医と相談しながら適切な治療方針を立てることをおすすめします。定期的な検診により早期発見・早期治療につなげることが、健康な生活を維持する鍵となります。

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