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「前立腺肥大症」の発症リスクが“4倍高い人”とは? 『加齢』との関係も医師が解説

 公開日:2025/11/14
「前立腺肥大症」の発症リスクが“4倍高い人”とは? 『加齢』との関係も医師が解説

前立腺肥大症の根本的な原因は完全には解明されていませんが、加齢と男性ホルモンの関与が重要な役割を果たしていることがわかっています。テストステロンが前立腺組織内でより強力なジヒドロテストステロンに変換され、前立腺細胞の増殖を促進します。遺伝的な要素も関与しており、一親等の血縁者に前立腺肥大症の方がいる場合は発症リスクが上昇します。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

前立腺肥大症の主な原因とメカニズム

前立腺肥大症の根本的な原因は完全には解明されていませんが、加齢と男性ホルモンの関与が重要な役割を果たしていることがわかっています。

年齢と男性ホルモンの関係

テストステロンは前立腺組織内で5α還元酵素という酵素により、より強力なジヒドロテストステロンに変換されます。ジヒドロテストステロンは前立腺細胞の増殖を促進し、特に移行領域と呼ばれる尿道周囲の組織で細胞数の増加を引き起こします。 この細胞増殖は加齢とともに進行し、50代では約50%、80代では約80%の男性に組織学的な前立腺肥大が認められます。ただし、すべての方に症状が現れるわけではありません。エストロゲンの相対的増加も、前立腺肥大に関与している可能性が指摘されています。 男性は加齢とともにテストステロンの産生が減少する一方で、エストロゲンの比率が相対的に上昇します。このホルモンバランスの変化が前立腺組織に影響を与え、肥大を促進すると考えられています。前立腺肥大症の発症頻度は年齢と強い相関関係にあります。

遺伝的要因と家族歴の影響

前立腺肥大症には遺伝的な要素が関与していることが研究により示されています。一親等の血縁者に前立腺肥大症の方がいる場合、発症リスクが約2倍〜4倍に上昇するという報告があります。特に若年で発症した家族歴がある場合、本人も早期に症状が現れる傾向があります。 遺伝子研究により、前立腺の成長や男性ホルモンの代謝に関わる複数の遺伝子変異が特定されています。5α還元酵素の遺伝子多型は、前立腺肥大症の発症リスクに影響を与える可能性が指摘されています。また、アンドロゲン受容体の遺伝子変異も、前立腺の男性ホルモンへの感受性を変化させると考えられています。 民族間でも前立腺肥大症の発症率に差があることが知られています。アジア系の方は欧米系の方と比較して発症率がやや低い傾向にありますが、これは遺伝的要因と環境要因の両方が関与していると推測されています。家族歴のある方は、より早期からの定期的な検診と予防的な生活習慣の改善が推奨されます。

まとめ

前立腺肥大症は加齢に伴い多くの男性が経験する疾患ですが、適切な知識と早期の対処により、生活の質を維持することが可能です。排尿症状や性機能への影響は、個人の生活に深刻な影響を及ぼす可能性がありますが、現代医療では薬物療法から低侵襲手術まで多様な選択肢が用意されています。症状に気づいた段階で泌尿器科を受診し、専門医と相談しながら適切な治療方針を立てることをおすすめします。定期的な検診により早期発見・早期治療につなげることが、健康な生活を維持する鍵となります。

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