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心不全の薬はどう効くの?4つの基本薬と症状を和らげる治療薬を医師が解説

 公開日:2025/11/17
心不全の薬はどう効くの?4つの基本薬と症状を和らげる治療薬を医師が解説

心不全治療の中心となるのが薬物療法です。複数の系統の薬剤を組み合わせることで、症状の軽減と生命予後の改善が期待できます。各薬剤にはそれぞれ特有の作用機序があり、患者さんの状態に応じて適切に選択・調整されます。ここでは心不全治療に用いられる主要な薬剤について、その種類と効果、注意点を解説します。

井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

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江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

心不全の薬物療法:基本となる治療

心不全治療の中心となるのが薬物療法です。複数の薬剤を組み合わせた適切な薬物療法により、症状の軽減と生命予後の改善が期待できます。

心不全治療薬の種類と作用機序

近年の心不全治療では、4つの系統の薬(4大薬剤)を組み合わせて使うことが標準的になっています。これらの薬はいずれも、心臓への負担を減らし、心臓の機能を長く保つことを目的としています。

まず、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は、血管を広げて血圧を下げ、心臓のポンプ負担を軽くします。さらに、これらに代わる新しい薬として、ARNI(アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬)が登場しており、心不全の再入院を減らす効果が報告されています。

次に、β遮断薬は心拍数を抑え、心臓のエネルギー消費を減らす薬です。以前は心不全では使いにくいとされていましたが、現在では慢性心不全の予後を改善することが明らかになり、主要な治療薬となっています。導入の際は、少量から始めてゆっくり増やすことが大切です。

さらに、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、体内の水分やナトリウムのバランスを整える薬で、心臓のリモデリング(形の変化)を抑える作用があります。特に、アルドステロンというホルモンの過剰な働きを抑えることで、心筋の線維化を防ぎます。

最後に、近年注目されているのがSGLT2阻害薬です。もともとは糖尿病治療薬として開発されましたが、血糖値に関係なく心不全の改善効果があることが確認されています。心臓や腎臓への負担を減らし、特に左室収縮機能が低下した心不全(HFrEF)で有効性が高いとされています。

これら4つの薬剤は、互いに異なる仕組みで心臓を守るため、併用することで相乗的な効果が得られると考えられています。治療は個々の症状や合併症に応じて調整されるため、医師と相談しながら適切な組み合わせを決めることが大切です。

症状緩和のための治療薬

上記の予後改善薬に加えて、症状を緩和するための薬剤も重要です。利尿薬は、体内の余分な水分を排泄し、むくみや息切れを改善します。ループ利尿薬が一般的に使用され、症状の程度に応じて用量を調整します。ただし、過度の利尿は腎機能の悪化や電解質異常を引き起こす可能性があるため、定期的な血液検査によるモニタリングが必要です。
ジギタリス製剤は、心収縮力を増強し、心拍数をコントロールする効果があります。特に心房細動を合併している心不全患者さんに有用です。
心不全治療薬の中には副作用の可能性があるものもあります。アンジオテンシン変換酵素阻害薬では空咳が出現することがあり、β遮断薬では導入初期に疲労感や息切れの悪化を感じることがあります。これらの副作用は時間とともに改善することも多いですが、症状が強い場合は担当医に相談し、薬剤の変更や用量調整を検討する必要があります。

まとめ

心不全は心臓のポンプ機能が低下する症候群であり、息切れ、むくみ、疲労感などの症状が現れます。原因は虚血性心疾患、高血圧、弁膜症など多岐にわたり、早期発見と適切な治療が生活の質と予後を大きく左右します。症状の変化に注意を払い、体重測定などの自己管理を継続することが急性増悪の予防につながります。
症状や治療に関する具体的な判断は、必ず医療機関で専門医の診察を受けたうえで行ってください。

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