目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 心不全と暮らすために知っておきたい再入院 予防のポイントを医師が解説

心不全と暮らすために知っておきたい再入院 予防のポイントを医師が解説

 公開日:2025/11/17
心不全とともに暮らすために知っておきたい再入院予防のポイントを医師が解説

心不全患者さんにとって急性増悪による入院は予後を悪化させる重要な出来事です。退院後の再入院率は高く、長期的な管理が大きな課題となっています。適切な自己管理と医療チームによる継続的な支援により、再入院のリスクを低減できます。ここでは再入院を防ぐための戦略と、長期管理における重要なポイントについて詳しく説明します。

井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

プロフィールをもっと見る
江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

心不全の再入院と長期管理の課題

心不全患者さんにとって、急性増悪による入院は予後を悪化させる重要な出来事です。退院後の再入院を防ぐための長期管理が、心不全治療における大きな課題となっています。

再入院のリスク因子と予防戦略

心不全で入院した患者さんの約25%が、退院後6ヶ月以内に再入院すると報告されています。この再入院は患者さんの生活の質を低下させるだけでなく、医療費の増加や予後の悪化にもつながります。再入院の主な原因として、服薬の自己中断、塩分や水分の過剰摂取、感染症の合併、血圧のコントロール不良などが挙げられます。
再入院を予防するためには、退院後の継続的な自己管理が不可欠です。毎日の体重測定、症状の観察、適切な水分・塩分制限、処方された薬の確実な服用などが基本となります。また、定期的な外来受診により、客観的な評価を受けることも重要です。血液検査や心臓超音波検査などにより、自覚症状が出る前に心不全の悪化を検出できることがあります。
近年、心不全の疾病管理プログラムが注目されています。これは医師、看護師、薬剤師、栄養士などの多職種チームが連携し、患者さんの自己管理を支援する包括的なアプローチです。定期的な電話フォローアップ、服薬指導、栄養指導などにより、再入院率の低減効果が報告されています。
遠隔医療の活用も進んでいます。体重や血圧、心拍数などのデータを自宅から医療機関に送信し、異常があれば早期に介入するシステムです。このような技術の活用により、患者さんの負担を軽減しながら、効果的な管理が可能になりつつあります。

社会的支援と療養環境の整備

心不全の長期管理において、医学的治療だけでなく、社会的支援も重要な役割を果たします。高齢の心不全患者さんでは、独居や家族の支援不足が再入院のリスク因子となることが知られています。服薬管理や食事管理が困難な場合、訪問看護や訪問診療などの在宅医療サービスの利用が有効です。
介護保険制度を活用することで、ヘルパーによる生活援助や、デイサービスでの健康管理なども受けられます。心不全患者さんの中には、身体障害者手帳の対象となる方もおり、医療費の助成や福祉サービスの利用が可能になることがあります。これらの社会資源を適切に活用することで、患者さんの療養環境を整え、再入院のリスクを低減できます。
ご家族や介護される方への教育も重要です。心不全患者さんの症状の変化を早期に察知し、適切に対応するためには、身近にいる家族の理解と協力が不可欠です。医療機関の中には、患者さんだけでなくご家族も参加できる心不全教室などを開催しているところもあり、疾患理解と自己管理の知識を深めることができます。療養環境を整えることで、患者さんが安心して生活できる基盤が構築されます。

まとめ

心不全は心臓のポンプ機能が低下する症候群であり、息切れ、むくみ、疲労感などの症状が現れます。原因は虚血性心疾患、高血圧、弁膜症など多岐にわたり、早期発見と適切な治療が生活の質と予後を大きく左右します。症状の変化に注意を払い、体重測定などの自己管理を継続することが急性増悪の予防につながります。
症状や治療に関する具体的な判断は、必ず医療機関で専門医の診察を受けたうえで行ってください。

この記事の監修医師

注目記事