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心不全の予後は改善できる?予後を良くする治療と生活の工夫【医師解説】

 更新日:2025/11/17
心不全の予後は改善できる?予後を良くする治療と生活の工夫【医師解説】

心不全の予後は重症度や原因疾患、年齢、合併症など多くの要因によって大きく異なります。適切な治療により長期間安定した状態を維持できる方もいれば、重症例では予後不良となることもあります。生命予後だけでなく生活の質も重要な評価項目です。ここでは心不全患者さんの予後に影響を与える因子と、治療による改善の可能性について解説します。

井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

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江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

心不全患者さんの予後と生命予後

心不全の予後は重症度や原因疾患、年齢、合併症など多くの要因により異なります。個々の状況に応じた理解が重要です。

重症度別の生存率と予後因子

心不全の予後は、診断時の重症度によって大きく異なります。軽症の心不全患者さんでは、適切な治療により長期間にわたって安定した状態を維持できることも少なくありません。
予後を左右する重要な因子として、左心室駆出率が挙げられます。左心室駆出率が低いほど予後不良であることが知られています。また、血液検査で測定される脳性ナトリウム利尿ペプチドやその前駆体の値も、予後予測の指標として用いられます。これらの数値が高いほど、心不全の重症度が高く、予後が不良である可能性があります。
腎機能障害、貧血、低ナトリウム血症などの合併症も予後不良因子です。さらに、年齢や糖尿病の有無、心房細動の合併なども予後に影響します。これらの多様な因子を総合的に評価することで、より正確な予後予測が可能となります。

生活の質と余命の考え方

心不全患者さんの予後を考える際、単に生存期間だけでなく、生活の質も重要な評価項目です。症状のコントロールが不十分な場合、たとえ生存していても、日常生活が大きく制限され、患者さん自身が望む生活を送ることが困難になります。
現代の心不全治療は、生命予後の改善だけでなく、症状の軽減と生活の質の向上も重要な目標としています。適切な薬物療法や非薬物療法により、患者さんの中には症状の改善と活動能力の向上が得られる方もいます。運動療法を含む心臓リハビリテーションも、身体機能と生活の質の改善に有効であることが示されています。
心不全は慢性疾患ですが、適切な治療で良好にコントロールできるといわれています。一方で、急性増悪を繰り返すたびに心機能が低下し、予後が悪化することもあります。このため、急性増悪を予防する自己管理が極めて重要です。
進行した心不全患者さんやご家族に対しては、緩和ケアの概念も重要になります。治療の目標を延命だけでなく、苦痛症状の軽減と残された時間の質の向上に置くことも、患者さんの価値観によっては適切な選択となります。

まとめ

心不全は心臓のポンプ機能が低下する症候群であり、息切れ、むくみ、疲労感などの症状が現れます。原因は虚血性心疾患、高血圧、弁膜症など多岐にわたり、早期発見と適切な治療が生活の質と予後を大きく左右します。症状の変化に注意を払い、体重測定などの自己管理を継続することが急性増悪の予防につながります。
症状や治療に関する具体的な判断は、必ず医療機関で専門医の診察を受けたうえで行ってください。

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