夜間頻尿は要注意!心不全の前兆となる身体のサイン【医師解説】

心不全の多くは突然発症するのではなく、徐々に進行する経過をたどります。明確な症状が出現する前の段階でも、身体はさまざまな前兆のサインを発しています。運動能力の低下や睡眠パターンの変化など、日常生活の中で気づける変化を早期に察知することが重症化の予防につながります。ここでは心不全の前兆として現れる身体の変化について、具体的な観察ポイントとともに解説します。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会
心不全の前兆となる身体の変化
心不全は突然発症することもありますが、多くの場合は徐々に進行する経過をたどります。明確な症状が出る前の段階で、身体にはさまざまな前兆が現れることがあり、これらのサインを早期に察知することが重症化を防ぐ鍵となります。
運動耐容能の低下:活動量の変化に注目する
心不全の前兆として重要なのが、運動耐容能の段階的な低下です。これは心臓のポンプ機能が徐々に低下していることを反映しており、日常生活の中で気づくことができる変化です。以前は問題なく歩けていた距離で休憩が必要になる、エレベーターやエスカレーターを使う頻度が増える、重い荷物を持つのが辛くなるといった変化が典型的です。
この変化は非常にゆっくりと進行するため、患者さん自身が気づきにくいという特徴があります。無意識のうちに活動量を減らし、症状を避けるような行動パターンに変化していることも少なくありません。
夜間頻尿と睡眠障害
夜間に何度もトイレに起きるようになることも、心不全の前兆として注意すべき症状です。心不全があると、日中は下半身に貯留していた水分が、夜間に横になることで心臓に戻り、腎臓での尿生成が促進されます。この結果、夜間の尿量が増加し、頻繁にトイレに起きる必要が生じます。
健康な方でも加齢とともに夜間頻尿は増加しますが、心不全による夜間頻尿は比較的短期間に悪化するという特徴があります。睡眠中に排尿のために1回以上起きるようになった、夜間の尿量が昼間より多いと感じる場合は、心不全の可能性を考慮する必要があります。夜間頻尿により睡眠が分断されると、日中の疲労感や集中力の低下につながり、生活の質が大きく損なわれます。
また、睡眠中の咳や息苦しさで目が覚めることが増えた場合も、心不全の前兆である可能性があります。特に寝入ってから数時間後に症状が現れることが多く、起き上がると症状が軽減するという特徴的なパターンを示します。睡眠障害は心不全の悪化因子でもあるため、これらの症状が持続する場合は早期に医療機関を受診することが重要です。
まとめ
心不全は心臓のポンプ機能が低下する症候群であり、息切れ、むくみ、疲労感などの症状が現れます。原因は虚血性心疾患、高血圧、弁膜症など多岐にわたり、早期発見と適切な治療が生活の質と予後を大きく左右します。症状の変化に注意を払い、体重測定などの自己管理を継続することが急性増悪の予防につながります。
症状や治療に関する具体的な判断は、必ず医療機関で専門医の診察を受けたうえで行ってください。