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【心不全治療】薬物療法以外の選択肢を医師が徹底解説

 公開日:2025/11/18
【心不全治療】薬物療法以外の選択肢を医師が徹底解説

薬物療法に加えて、心不全患者さんにはさまざまな非薬物療法が適応されることがあります。心臓再同期療法や植え込み型除細動器などのデバイス治療、心臓リハビリテーションなど、多角的なアプローチが症状改善と予後向上に寄与します。ここでは薬物療法以外の治療選択肢について、それぞれの適応と効果を詳しく説明します。

井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

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江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

心不全の非薬物療法:デバイス治療とその他の介入

薬物療法に加えて、心不全患者さんにはさまざまな非薬物療法が適応されることがあります。これらの治療法は、薬物療法だけでは十分な効果が得られない患者さんにおいて、症状の改善や予後の向上に寄与します。

心臓再同期療法と植え込み型除細動器

心臓再同期療法は、特殊なペースメーカーを用いた治療法です。重症心不全患者さんの中には、左右の心室の収縮タイミングがずれている方がいます。心臓再同期療法では、右心室と左心室の両方にペーシングリードを留置し、両心室を同時に収縮させることで、心臓の収縮効率を改善します。
心臓再同期療法の適応となるのは、左心室駆出率が低下し、心電図で幅の広いQRS波(心室内伝導障害)を認め、薬物療法でも症状が残存する患者さんです。適切に選択された患者さんでは、症状の改善、運動耐容能の向上、入院回数の減少、さらには生命予後の改善も報告されています。ただし、すべての患者さんに効果があるわけではなく、約30%の患者さんでは心臓再同期療法への反応が乏しいとされています。
植え込み型除細動器は、致死的な心室性不整脈を検出し、電気ショックを与えることで突然死を予防する装置です。重症心不全患者さんでは、突然死のリスクが高いため、左心室駆出率が著しく低下している場合には植え込み型除細動器の植え込みが検討されます。心臓再同期療法と植え込み型除細動器の機能を併せ持つ装置もあり、必要に応じて選択されます。

心臓リハビリテーションと生活指導

心臓リハビリテーションは、心不全患者さんの包括的な管理において重要な役割を果たします。かつては心不全患者さんは安静が推奨されていましたが、現在では適切な運動療法が心機能の改善、症状の軽減、生活の質の向上、さらには予後の改善につながることが明らかになっています。
心臓リハビリテーションプログラムには、有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟性運動などが含まれます。運動の種類や強度は、個々の患者さんの心機能や身体能力に応じて設定されます。医療機関で実施される監視下運動療法では、心電図モニタリングを行いながら運動を行うことができます。また、自宅で継続できる運動プログラムの指導も受けられます。
心臓リハビリテーションには、運動療法だけでなく、栄養指導、服薬指導、心理的サポート、生活習慣の改善指導なども含まれます。塩分制限は心不全管理の基本であり、一般的には1日6g未満が推奨されます。
禁煙、適正体重の維持、アルコール摂取の制限なども重要な生活指導項目です。過度のアルコール摂取は心筋に直接的な障害を与えるため、心不全患者さんでは特に注意が必要です。また、インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種も推奨されます。
心不全の治療では、薬や食事、運動だけでなく、心のサポートもとても大切です。心不全の方の中には、病気への不安や気分の落ち込み(うつ症状)を感じる人が少なくありません。こうした心理的な不調は、生活の質を下げるだけでなく、「薬を飲み忘れる」「通院が面倒になる」など、治療の継続にも影響することがあります。
そのため、気持ちの不調を感じたときは我慢せずに、医師や看護師に相談しましょう。必要に応じて、心理カウンセリングや心の状態を整えるお薬が役立つ場合もあります。
また、心臓リハビリテーションでは、体を動かすトレーニングだけでなく、医療スタッフとの対話や仲間との交流を通じて、前向きな気持ちを取り戻すサポートも行われます。体と心の両方を整えることで、心不全と上手に付き合いながら生活していくことができるでしょう。

まとめ

心不全は心臓のポンプ機能が低下する症候群であり、息切れ、むくみ、疲労感などの症状が現れます。原因は虚血性心疾患、高血圧、弁膜症など多岐にわたり、早期発見と適切な治療が生活の質と予後を大きく左右します。症状の変化に注意を払い、体重測定などの自己管理を継続することが急性増悪の予防につながります。
症状や治療に関する具体的な判断は、必ず医療機関で専門医の診察を受けたうえで行ってください。

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