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「大動脈解離」はなぜ“突然死”を招くのか? 医師が仕組みを解説

 公開日:2025/11/22

大動脈解離は、適切な治療が行われなければ極めて短時間で致命的な経過をたどる可能性があります。この病態がなぜ生命を脅かすのか、そのメカニズムを理解することは本疾患の重大性を認識するうえで不可欠です。大量出血や重要臓器への血流障害が、急速に全身状態を悪化させていきます。ここでは、大動脈解離が急死に至る機序について詳しく解説します。

井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

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江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

大動脈解離による急死のメカニズム

大動脈解離は、適切な治療が行われなければ致命的な経過をたどる可能性が高い病態です。急死に至る機序を理解することは、本疾患の重大性を認識するうえで重要です。

大動脈破裂による出血性ショック

大動脈解離で致命的な合併症の一つは、解離した大動脈壁が完全に破裂し、大量出血を起こすことです。大動脈は身体内で太い血管であり、毎分5リットル以上の血液が流れています。この血管が破裂すると、短時間のうちに大量の血液が胸腔や腹腔内に流出し、循環血液量が急速に減少します。

出血性ショックの状態では、血圧が急激に低下し、重要臓器への血流が維持できなくなります。脳や心臓、腎臓といった生命維持に不可欠な臓器が機能不全に陥り、意識消失や心停止に至ります。特にA型解離で心膜腔内に破裂した場合、心タンポナーデという状態になり、心臓が圧迫されて拍出機能が著しく低下します。この場合、数分以内に死亡する可能性があります。

重要臓器への血流遮断と多臓器不全

大動脈解離では、解離が進行することで重要臓器へ向かう分枝血管の入口が閉塞され、臓器虚血が生じます。冠動脈が閉塞すれば急性心筋梗塞が、脳へ向かう血管が閉塞すれば脳梗塞が発症し、いずれも致命的となる可能性があります。腎動脈や腸間膜動脈の閉塞も、急性腎不全や腸管壊死を引き起こし、生命を脅かします。

複数の臓器が同時に虚血に陥ると、多臓器不全という状態になります。この状態では、各臓器の機能が相互に影響し合いながら急速に悪化し、治療が極めて困難になります。また、解離によって大動脈弁が機能不全に陥ると、急性心不全が発症し、肺水腫や呼吸不全を来すこともあります。これらの合併症は発症後数時間から数日以内に致命的となる可能性があります。

まとめ

大動脈解離は、突然発症し致命的な経過をたどる可能性のある緊急性の高い血管疾患です。激烈な胸背部痛という特徴的な症状を理解し、前兆のサインを見逃さないこと、高血圧や動脈硬化といった原因因子を適切に管理すること、そして急死のリスクと再発の可能性を認識したうえで治療後も継続的に経過を観察することが、生命予後を改善するために極めて重要です。

本記事で解説したように、大動脈解離は発症後の時間経過が予後を大きく左右するため、突然の激しい痛みが生じた際には直ちに救急車を要請することが必要です。また、リスク因子をお持ちの方は、定期的な循環器内科の受診と、日常的な血圧管理を心がけてください。治療後も長期にわたる厳格な血圧コントロールと定期的な画像検査による監視が、再発予防のために不可欠です。

この病態についての正確な知識を持つことで、ご自身やご家族の健康を守る一助となれば幸いです。気になる症状がある場合や、リスク因子について不安がある場合には、専門の医師にご相談されることをお勧めします。

この記事の監修医師

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