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「大動脈解離」の前兆は“軽い違和感”から始まる…40〜50代が見逃しやすい初期サイン

 公開日:2025/11/18

大動脈解離は突然発症する病態ですが、一部の方では発症前に何らかの身体の変化を経験することがあります。こうした前兆のサインを見逃さず、適切に対応することが重症化を防ぐ鍵となります。軽微な症状であっても、リスク因子を持つ方にとっては重要な警告となる場合があります。ここでは、大動脈解離の前兆として注意すべき症状について解説します。

井筒 琢磨

監修医師
井筒 琢磨(医師)

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江戸川病院所属。専門領域分類は内科(糖尿病内科、腎臓内科)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会

大動脈解離の前兆―見逃してはいけない初期サイン

大動脈解離は突然発症する病態ですが、一部の患者さんでは発症前に何らかの前兆を経験することがあります。これらのサインを見逃さないことが、重症化を防ぐ鍵となります。

軽度の胸部違和感や背部不快感

大動脈解離の数日前から数週間前に、軽度の胸部違和感や背部の鈍い痛みを感じる方がいらっしゃいます。これは大動脈壁の脆弱化や小さな亀裂の形成を反映している可能性があります。この段階では痛みが軽度であるため、筋肉痛や疲労と誤認されやすく、見過ごされることが少なくありません。

また、血圧の不安定さや動悸、息切れといった非特異的な症状が前兆として現れることもあります。特に、普段は血圧が安定している方が急に血圧の変動が大きくなった場合や、コントロール良好だった高血圧が突然悪化した場合には注意が必要です。これらの症状は大動脈壁にかかるストレスの増大を示唆している可能性があります。

突然の血圧上昇と持続する高血圧

大動脈解離のリスク因子である高血圧は、発症前の重要な前兆ともいえます。特に、血圧が急激に上昇して高い状態が持続する場合、大動脈壁への負荷が増大し、解離のリスクが高まります。収縮期血圧が180mmHgを超える高血圧が続く状態は、大動脈壁に強い圧力をかけ続けることになります。

また、これまで血圧管理が良好だった患者さんが、薬を服用していても血圧が下がりにくくなった場合や、治療抵抗性の高血圧が出現した場合も注意が必要です。こうした血圧の変化は、大動脈壁の状態変化や血管系全体の負荷増大を反映している可能性があります。定期的な血圧測定と適切な管理が、大動脈解離の予防において極めて重要です。

まとめ

大動脈解離は、突然発症し致命的な経過をたどる可能性のある緊急性の高い血管疾患です。激烈な胸背部痛という特徴的な症状を理解し、前兆のサインを見逃さないこと、高血圧や動脈硬化といった原因因子を適切に管理すること、そして急死のリスクと再発の可能性を認識したうえで治療後も継続的に経過を観察することが、生命予後を改善するために極めて重要です。

本記事で解説したように、大動脈解離は発症後の時間経過が予後を大きく左右するため、突然の激しい痛みが生じた際には直ちに救急車を要請することが必要です。また、リスク因子をお持ちの方は、定期的な循環器内科の受診と、日常的な血圧管理を心がけてください。治療後も長期にわたる厳格な血圧コントロールと定期的な画像検査による監視が、再発予防のために不可欠です。

この病態についての正確な知識を持つことで、ご自身やご家族の健康を守る一助となれば幸いです。気になる症状がある場合や、リスク因子について不安がある場合には、専門の医師にご相談されることをお勧めします。

この記事の監修医師

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