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「迎え酒が効果」を感じさせる理由とは?【管理栄養士監修】

 更新日:2025/11/25
迎え酒が効果を感じさせる生理学的理由

なぜ迎え酒をすると楽になったと感じるのでしょうか。その背景には、脳内の神経伝達物質や血中アルコール濃度の変動など、複雑な生理学的メカニズムが存在します。ここでは一時的な症状緩和が生じる仕組みを科学的に解説します。これらのメカニズムを理解することで、迎え酒が本質的な解決策ではないことが明確になるでしょう。

武井 香七

監修管理栄養士
武井 香七(管理栄養士)

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帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科卒業 横浜未来ヘルスケアシステム、戸塚共立第一病院3年7ヶ月勤務 株式会社コノヒカラ、障がい者グループホーム半年勤務 その後フリーランスを経て株式会社Wellness leadを設立。栄養士事業と健康事業を行なっている。

保有免許・資格
管理栄養士資格

迎え酒が効果を感じさせる生理学的理由

迎え酒で楽になったと感じる背景には、複雑な生理学的メカニズムが存在します。これらを理解することで、なぜ一時的な効果に過ぎないのかが明確になります。

神経伝達物質への影響

アルコールは中枢神経系に作用し、複数の神経伝達物質のバランスを変化させます。特に重要なのがGABA(γ-アミノ酪酸)とグルタミン酸の二つです。GABAは抑制性の神経伝達物質であり、アルコールはこのGABA受容体の働きを強めることで、不安や緊張を和らげる効果をもたらします。 一方、グルタミン酸は興奮性の神経伝達物質で、アルコールはこの働きを抑制します。飲酒の翌日、体内からアルコールが抜けるとグルタミン酸の活動が急激に活発になり、これが不安感や手の震え、イライラといった離脱症状の原因となります。迎え酒をすることで再びグルタミン酸の活動が抑えられるため、これらの不快な症状が一時的に緩和されるのです。 また、ドーパミンという報酬系に関わる神経伝達物質も関与しています。アルコール摂取によってドーパミンが放出されると、快感や満足感が生じます。二日酔いの不快な状態から解放されたと感じるのは、このドーパミンによる作用も大きく影響しています。しかし、これは脳の報酬系を刺激し続けることになり、依存形成のメカニズムそのものです。

血中アルコール濃度の変動と症状

血中アルコール濃度は、二日酔いの症状と密接に関連しています。飲酒後、血中アルコール濃度が上昇している間は、多幸感や高揚感が得られますが、濃度が低下し始めると急激に不快な症状が現れます。これは血中アルコール濃度の下降局面において、身体が適応しようとする過程で生じる現象です。 迎え酒をすると、この下降していた血中アルコール濃度が再び上昇するため、離脱に伴う不快症状が一時的に抑えられます。しかし、これは問題の先送りでしかありません。新たに摂取したアルコールもやがて代謝されて濃度が下がり始めると、再び同じ症状に見舞われることになります。 さらに問題なのは、この繰り返しによって身体がアルコールに対する耐性を獲得していくことです。同じ効果を得るために必要なアルコール量が徐々に増えていき、結果として飲酒量全体が増加するという悪循環に陥ります。血中アルコール濃度を一定に保つために飲み続けるという状態は、依存症の危険な兆候といえます。

まとめ

二日酔いの朝に迎え酒をすると一時的に楽になったように感じられますが、これは症状を根本的に治しているわけではありません。むしろ肝臓が休む間もなくアルコールを分解し続けることになり、ダメージが蓄積しやすくなります。迎え酒で得られる効果は、神経伝達物質の変化や血中アルコール濃度の再上昇による一時的なものに過ぎず、数時間後には症状が再燃します。医学的に正しい対処法は、十分な水分補給、適切な栄養摂取、そして休息です。迎え酒の習慣がある方は、早めに専門医療機関への相談をご検討ください。

この記事の監修管理栄養士

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