むし歯予防に関してはさまざまな情報が流通していますが、中には誤解や不正確な情報も含まれています。正しい知識を持ち、効果的な予防を実践することが重要です。このセクションでは過度な除菌対策の問題点や、乳歯のむし歯を軽視する誤りについて詳しく説明します。適切な予防の考え方を理解し、バランスの取れた対策を継続することで、親子双方にとってストレスの少ない予防習慣を実現しましょう。
プロフィールをもっと見る
1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授。
著書は「口腔顎顔面外科学（医歯薬出版）」「標準口腔外科学（医学書院）」「カラーアトラス コンサイス口腔外科学（学建書院）」「口腔がん検診 どうするの、どう診るの（クインテッセンス出版）」「衛生士のための看護学大意（医歯薬出版）」「かかりつけ歯科医からはじめる口腔がん検診step1/2/3（医歯薬出版）」「エナメル上皮腫の診療ガイドライン（学術社）」「薬剤・ビスフォスフォネート関連顎骨壊死MRONJ・BRONJ（クインテッセンス出版）」「知っておきたい舌がん（扶桑社）」「口腔がんについて患者さんに説明するときに使える本（医歯薬出版）」など。
むし歯予防における注意点と誤解
むし歯予防に関してはさまざまな情報が流通していますが、中には誤解や不正確な情報も含まれています。正しい知識を持ち、効果的な予防を実践することが重要です。
過度な除菌対策の問題点
むし歯菌の感染を恐れるあまり、過度な除菌対策を行うことには注意が必要です。完全に菌の侵入を防ぐことは現実的ではなく、また口腔内には有益な細菌も存在します。過度に神経質になると、親子のスキンシップが制限され、情緒的な発達に影響を与える可能性もあります。
重要なのは感染を完全に防ぐことではなく、感染の時期を遅らせ、菌の量を減らすことです。一部の研究では、3歳以降に感染した場合はむし歯発生リスクが低い傾向が報告されています。ただし個人差が大きく、すべての子どもに当てはまるわけではありません。完璧を目指すのではなく、できる範囲で予防対策を継続することが大切です。
また除菌グッズや洗口液の使用については、年齢や使用方法に注意が必要です。特に乳幼児に成人用の洗口液を使用することは避けるべきです。不明な点がある場合は、歯科医師や歯科衛生士に相談し、適切な方法を確認しましょう。製品によって成分や濃度が異なるため、個別の状況に応じた判断が求められます。
乳歯のむし歯を軽視する誤り
「乳歯はどうせ生え変わるから、むし歯になっても大丈夫」という考えは誤りです。乳歯のむし歯は永久歯の健康に影響を与える可能性があります。乳歯がむし歯で早期に失われると、永久歯の生える位置がずれ、歯並びや噛み合わせに問題が生じることがあります。
乳歯のむし歯が進行すると、根の先端に膿がたまり、その下で形成中の永久歯に影響を与える場合があります。永久歯のエナメル質形成不全や変色の原因となることもあります。また乳歯のむし歯による痛みは、食事や咀嚼に支障をきたし、栄養摂取や顎の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
乳歯の健康は、口腔機能の発達や食習慣の形成にも関わります。適切に食事ができることは、バランスの良い食生活の基礎となります。また幼少期に適切な口腔ケアの習慣を身につけることは、生涯にわたる口腔の健康につながります。ただし個人差があり、すべてのケースで同じ影響が出るわけではありません。
まとめ
赤ちゃんのむし歯予防は、感染経路の理解と日常的な対策の積み重ねによって実践できます。特に1歳半から3歳までの感染の窓と呼ばれる時期に配慮し、食器の共有を避ける、保護者自身の口腔ケアを徹底するなどの対策を講じることが大切です。乳歯の健康は永久歯や全身の発達にも影響する可能性があるため、軽視せず適切なケアを継続しましょう。ただし完璧を目指す必要はなく、できる範囲で無理なく続けることが重要です。不安な点がある場合は、早めに歯科医院を受診し、専門家の指導を受けることをおすすめします。
