発熱を伴う頭痛は要注意! 「髄膜炎」や「脳炎」を見極めるポイントを医師に聞く

感染症や炎症が原因で起こる頭痛も、緊急性の高い状態を示すことがあります。髄膜炎や脳炎では発熱と激しい頭痛が特徴的で、迅速な治療を要します。また側頭動脈炎は視力障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。発熱や項部硬直などの特徴的なサインについて詳しく見ていきましょう。

監修医師:
石井 映幸(医師)
帝京大学医学部を卒業。同脳神経外科教室に入局し、医学博士取得。医局長、医学部講師を経て現職。帝京大学医学部非常勤講師、湘南医療大学臨床教授を兼務
【資格】
・日本脳神経外科 専門医
・医学博士
・臨床研修指導医
・日本スポーツ協会公認スポーツドクター
・日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医
・認知症サポート医
・脳神経外科認知症 認定医
目次 -INDEX-
感染症や炎症による危険な頭痛
感染症や炎症が原因で起こる頭痛も、緊急性の高い状態を示すことがあります。発熱や項部硬直などの特徴的なサインに注意が必要です。
髄膜炎や脳炎による頭痛
髄膜炎は、脳や脊髄を覆う髄膜に炎症が起こる疾患です。細菌性、ウイルス性、真菌性などさまざまな原因があり、特に細菌性髄膜炎は迅速な治療を要する重篤な状態です。症状としては、発熱、激しい頭痛、項部硬直(首を前に曲げようとすると抵抗があり痛む)が三例とされています。
光過敏、意識レベルの低下、けいれん発作、吐き気や嘔吐なども伴います。小児や高齢者では典型的な症状が現れにくいこともあり、注意が必要です。診断には腰椎穿刺による髄液検査が行われ、髄液中の細胞数や糖、タンパク質の測定、細菌やウイルスの検出が行われます。
脳炎は脳実質自体に炎症が起こる疾患で、頭痛に加えて意識障害、けいれん、人格変化、運動麻痺などより重篤な神経症状を呈します。ヘルペスウイルスによる脳炎は、早期に抗ウイルス薬投与を開始しないと重篤な後遺症や死亡に至ることがあります。発熱と頭痛に加えて、意識の変容や行動異常が見られた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。特に子どもや高齢の方で、発熱を伴う頭痛が続く場合は、早めの受診をおすすめします。
側頭動脈炎の症状と危険性
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)は、50歳以上、特に70歳代に多く見られる血管の炎症性疾患です。側頭部の動脈に炎症が起こり、頭痛、側頭部の圧痛、咀嚼時の顎の痛みなどが特徴的な症状として現れます。頭痛は持続性で、こめかみを押すと痛みが増強します。
この疾患で懸念されるのは、眼動脈の炎症により突然の視力低下や失明が起こる可能性があることです。一度失明すると回復が困難であるため、早期診断と早期治療が極めて重要です。発熱、体重減少、全身倦怠感などの全身症状を伴うことも多く、血液検査では炎症反応(CRPや赤血球沈降速度)の上昇が見られます。
診断には側頭動脈の生検が行われることがありますが、典型的な症状と検査所見があれば、視力障害を防ぐために生検を待たずにステロイド治療が開始されることもあります。新たに始まった頭痛で、特に高齢の方、視覚症状がある、側頭部の動脈が腫れている、顎の痛みがあるといった場合は、速やかに医療機関を受診することが推奨されます。50歳以降に新たに始まった頭痛は、他の疾患の可能性も考慮し、専門医による評価を受けることが望ましいです。
まとめ
偏頭痛は拍動性の痛みや随伴症状が特徴的な疾患ですが、その症状や種類は多様です。前兆の有無、頻度、慢性化の程度によって、適切な対処法が異なります。視覚性前兆や感覚障害などの前兆症状を理解することで、早期の対処が可能になる場合もあります。
頭痛のパターンに変化が見られた場合や日常生活に支障が出ている場合は、専門医への相談をおすすめします。適切な診断と治療により、生活の質を大きく改善することが期待できます。偏頭痛は我慢する疾患ではなく、適切に対処することで改善が見込める疾患です。困っていることがあれば、頭痛外来や神経内科などの専門診療科を受診し、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。
参考文献