“薬の使いすぎ”が頭痛を招く? 「薬物乱用頭痛」を防ぐためのポイントを医師が解説

偏頭痛が長期化し頻度が増すと、慢性偏頭痛へと移行する場合があります。また頭痛治療薬を頻繁に使用することで、逆に頭痛が悪化する薬物乱用頭痛を引き起こすこともあります。これらは日常生活への影響がより深刻になるため、早めの対処が重要です。慢性偏頭痛と薬物乱用頭痛について解説します。

監修医師:
石井 映幸(医師)
帝京大学医学部を卒業。同脳神経外科教室に入局し、医学博士取得。医局長、医学部講師を経て現職。帝京大学医学部非常勤講師、湘南医療大学臨床教授を兼務
【資格】
・日本脳神経外科 専門医
・医学博士
・臨床研修指導医
・日本スポーツ協会公認スポーツドクター
・日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医
・認知症サポート医
・脳神経外科認知症 認定医
目次 -INDEX-
慢性偏頭痛と薬物乱用頭痛
偏頭痛が長期化し頻度が増すと、慢性偏頭痛へと移行する場合があります。また、不適切な薬物使用が新たな問題を生むこともあるため注意が必要です。
慢性偏頭痛への移行
慢性偏頭痛は、月に15日以上、3ヶ月を超えて頭痛が持続する状態を指します。これらの頭痛日のうち、少なくとも月8日以上は偏頭痛の特徴を満たす頭痛である必要があります。通常の偏頭痛(反復性偏頭痛)から慢性偏頭痛への移行は、年間で約2.5%の患者さんに見られると報告されています。
慢性偏頭痛の患者さんは、日常生活への影響がより深刻になり、仕事や社会活動に大きな制限を受けることが少なくありません。また、医療機関を受診する頻度も高く、医療費の負担も増大します。精神的な負担から抑うつ状態を併発することも多く、生活の質は著しく低下します。ただし、適切な予防治療や生活習慣の改善により、慢性偏頭痛から反復性偏頭痛へと改善する可能性もあります。早めの対処が重要です。
薬物乱用頭痛の発症メカニズム
薬物乱用頭痛は、頭痛治療薬を頻繁に使用することで逆に頭痛が悪化または慢性化する状態です。トリプタン等の特定薬は月10日以上、その他の一般鎮痛薬は月15日以上の使用が継続すると薬物乱用頭痛の発症リスクが高まります。
このメカニズムは完全には解明されていませんが、中枢神経系の痛覚調整機能が変化し、痛みに対する閾値が低下することが関与していると考えられています。また、薬物の使用を中断すると頭痛が悪化するため、さらに薬物を使用するという悪循環に陥ります。
薬物乱用頭痛の特徴は、毎日または頻繁に頭痛があり、起床時から頭痛が存在することが多く、薬物を使用しても効果が持続しないという点です。元の偏頭痛とは異なる鈍い痛みやしつこい痛みに変化することもあります。治療には原因となっている薬物の中止が必要ですが、離脱時に頭痛が一時的に悪化するため、専門医の指導のもとで計画的に行うことが重要です。薬物の使用頻度を把握し、月に10日以上使用している場合は早めに医師に相談することをおすすめします。
まとめ
偏頭痛は拍動性の痛みや随伴症状が特徴的な疾患ですが、その症状や種類は多様です。前兆の有無、頻度、慢性化の程度によって、適切な対処法が異なります。視覚性前兆や感覚障害などの前兆症状を理解することで、早期の対処が可能になる場合もあります。
頭痛のパターンに変化が見られた場合や日常生活に支障が出ている場合は、専門医への相談をおすすめします。適切な診断と治療により、生活の質を大きく改善することが期待できます。偏頭痛は我慢する疾患ではなく、適切に対処することで改善が見込める疾患です。困っていることがあれば、頭痛外来や神経内科などの専門診療科を受診し、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。
参考文献