「偏頭痛の始まり」は視界の異常から? 前兆症状を医師が解説

偏頭痛患者さんの一部には、頭痛が始まる前に特有の前兆が現れます。視野にキラキラとした光が見える閃輝暗点や、手足のしびれといった感覚障害などが代表的です。これらの前兆症状を理解しておくことで、発作への早期対処が可能になります。前兆のメカニズムと具体的な症状について見ていきましょう。

監修医師:
石井 映幸(医師)
帝京大学医学部を卒業。同脳神経外科教室に入局し、医学博士取得。医局長、医学部講師を経て現職。帝京大学医学部非常勤講師、湘南医療大学臨床教授を兼務
【資格】
・日本脳神経外科 専門医
・医学博士
・臨床研修指導医
・日本スポーツ協会公認スポーツドクター
・日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医
・認知症サポート医
・脳神経外科認知症 認定医
目次 -INDEX-
偏頭痛の前兆症状
一部の偏頭痛では、頭痛が始まる前に特有の前兆が現れます。視覚症状や感覚障害など、これらの症状を理解することで早期の対処が可能になります。
視覚性前兆としての閃輝暗点
偏頭痛患者さんの約20から30%に見られるのが、視覚性の前兆症状です。代表的なのが「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる現象で、視野の一部にキラキラと光る点やギザギザした線が現れます。この光の模様は、徐々に視野の周辺に向かって広がっていき、その後に暗い部分(暗点)が残ります。
閃輝暗点は通常5分から60分程度続き、その後に頭痛が始まることが一般的です。患者さんによっては、虹色の光や稲妻のような模様、モザイク状の視野障害として感じられることもあります。両目に同時に現れることが多く、目を閉じても消えないのが特徴です。
この視覚症状は、脳の後頭葉と呼ばれる視覚を司る部分の血流変化によって生じると考えられています。症状自体は一時的なもので、頭痛が収まれば視野も正常に戻ります。ただし、初めて経験する方は不安を感じることも少なくありません。前兆症状が現れた場合は、早めに対処する準備をすることで、発作への対応がスムーズになることがあります。
感覚障害や言語障害などの前兆
視覚症状以外にも、さまざまな神経学的な前兆が現れることがあります。手足や顔面のしびれ感やチクチクとした感覚異常は、比較的よく見られる前兆症状です。多くの場合、片側の手から始まり、腕を伝って顔面へと広がっていく特徴があります。
言語に関する症状として、言葉が出にくくなる、言いたいことがうまく表現できない、相手の話している内容が理解しづらいといった症状が現れることもあります。ただし、これらの症状も一時的なもので、通常は60分以内に改善します。
一部の患者さんでは、身体の動きが鈍くなる、力が入りにくいといった運動機能の変化を感じることがあります。また、前兆期には集中力の低下、あくびの増加、食欲の変化、気分の変動なども報告されています。これらの前駆症状は頭痛の数時間から数日前から始まることもあり、「何となく偏頭痛が来そう」と予感する方もいます。
まとめ
偏頭痛は拍動性の痛みや随伴症状が特徴的な疾患ですが、その症状や種類は多様です。前兆の有無、頻度、慢性化の程度によって、適切な対処法が異なります。視覚性前兆や感覚障害などの前兆症状を理解することで、早期の対処が可能になる場合もあります。
頭痛のパターンに変化が見られた場合や日常生活に支障が出ている場合は、専門医への相談をおすすめします。適切な診断と治療により、生活の質を大きく改善することが期待できます。偏頭痛は我慢する疾患ではなく、適切に対処することで改善が見込める疾患です。困っていることがあれば、頭痛外来や神経内科などの専門診療科を受診し、ご自身に合った治療法を見つけることが大切です。
参考文献