一部の遺伝性疾患を持つ方では、白血病の発症リスクが一般の方と比べて高い傾向にあることが知られています。ダウン症候群やファンコニ貧血など、特定の遺伝的背景が白血病の発症に影響を与える可能性があるため、定期的な経過観察が推奨されます。これらの疾患とリスクの関係を理解することで、適切な健康管理につなげることができます。ここでは白血病リスクが高まる可能性のある遺伝性疾患について詳しく解説します。
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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科
白血病発症リスクが高まる可能性のある遺伝性疾患
一部の遺伝性疾患では、白血病の発症リスクが一般集団と比べて高い傾向があることが知られています。これらの疾患を持つ方は定期的な経過観察が推奨されます。
ダウン症候群と白血病
ダウン症候群(21トリソミー)の方は、白血病の発症リスクが健常者と比べて10〜20倍程度高いとされています。特に乳児期から幼児期にかけて、急性巨核芽球性白血病の発症リスクが上昇することが知られています。21番染色体の過剰な遺伝子が造血細胞の異常増殖に関与していると考えられています。
ダウン症候群の新生児では、一過性骨髄異常増殖症という白血病に類似した状態が見られることがあります。これは生後数週間で自然に軽快することが多いものの、約20〜30%の患者さんでは数年以内に真の白血病へと移行する可能性があります。そのため、ダウン症候群と診断された場合は、定期的な血液検査による経過観察が重要です。
治療面では、ダウン症候群に伴う白血病は抗がん剤への反応が良好である場合が多いことが知られています。一方で、心疾患などの合併症を持つ方が多いため、治療計画は個々の全身状態を考慮して慎重に立案されます。ダウン症候群を持つすべての方が白血病を発症するわけではありませんが、リスクを理解したうえで適切な健康管理を行うことが大切です。
その他の遺伝性疾患
ファンコニ貧血は、DNA修復機構の異常により骨髄不全を来す遺伝性疾患です。この疾患を持つ方の約10〜30%が、20歳までに急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群を発症する可能性があるとされています。骨髄移植が根治的治療として検討されますが、DNA修復能力の低下により放射線や化学療法への感受性が高く、治療には特別な配慮が必要です。
神経線維腫症1型やヌーナン症候群などの遺伝性疾患でも、若年性骨髄単球性白血病のリスクが上昇する場合があります。これらの疾患に共通するのは、細胞増殖シグナル伝達経路の異常です。Li-Fraumeni症候群では、がん抑制遺伝子であるTP53の生殖細胞系列変異により、若年期からさまざまながんを発症しやすく、白血病もその一つとされています。
遺伝性疾患と診断されている場合、定期的な血液検査や骨髄検査による監視が推奨されます。早期発見により治療開始のタイミングを適切に判断でき、予後の改善につながる可能性があります。遺伝カウンセリングを通じて、家族全体でリスクを理解し、適切な健康管理を行うことが大切です。
まとめ
白血病は早期発見と適切な治療により、寛解や長期生存が期待できる疾患となっています。疲労感、発熱、出血傾向などの症状が続く場合は、速やかに血液内科を受診することが重要です。ただし、これらの症状は他の疾患でも現れるため、過度に不安を感じる必要はありません。気になる症状が続く場合は、医療機関での相談をおすすめします。
定期的な健康診断を受け、血液検査の異常を見逃さないことも、早期発見につながる可能性があります。白血病について正しい知識を持ち、自身の身体の変化に注意を払うことで、適切なタイミングで医療機関を受診し、より良い治療成績を得ることが可能になる場合があります。
気になる症状がある場合や、リスク要因を持つ方は、定期的に医療機関で相談されることをおすすめします。